基礎から学ぶ遺言相続講座(相続1)

 「相続の開始原因」って何だろうか?

 民法第882条は、「相続は人の死亡を原因として開始する。」とあります。この場合の人の死亡とは、心停止や脳死(脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったとき)のことを指すと解する見解が有力となっています(臓器の移植に関する法律第6条第2項参照)。

 また、死亡には、失踪宣告があって、その効果として、死亡したものとみなされるケースもあります。

 この場合、死亡したみなされる日は、①不在者の生死が7年間明らかでないときは、7年の期間が満了した時、②死亡の原因たる危難に遭遇した者の生死が、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないときは、危難が去った時に、それぞれ死亡したものとみなされます(民法第30条、第31条)。「みなす」ということですので、反対証拠があってもそのままでは覆らないので、別の時に死亡したと主張する者は、失踪宣告の取消という手続を踏む必要があります。

 さらに、水難、火災その他の事変によって死亡し、取り調べをした官庁又は公署が死亡したと認定したときは、戸籍に死亡として記載されますので、死亡として取り扱われます(いわゆる認定死亡、戸籍法第89条)。ただし、これは、便宜的な取扱いであって、生存の証拠があれば当然覆ることになります。

 このほか、相続に関して注意すべき点は、例えば、交通事故や火災などの災害で、2人がともに亡くなった場合、その死亡した日時の先後関係がはっきりしていれば、その順序で相続すればよいでしょうが、先後関係が明らかでないときは、同時に死亡したものと推定することにしています(民法第32条第1項)。ということは、同時に死亡した者の間では、相続することはないということです。こちらは、推定するということですので、反対証拠があれば覆すことができるということになります。

 いずれにしても、相続においては、死亡した者の死亡した日時の先後関係により相続人がガラリと変わってきますので、実務上は、死亡した時はいつであるかは非常に重要な意味を持つことになります。

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