基礎から学ぶ遺言相続講座(遺言3)

 遺言書がないと何が困るか?

 遺言書がないと、相続人間で争族争いとなって遺産分割協議が成立しない場合は、最終的には法定相続分で相続することになります。

 でも、遺産の分け方を決めるに当たって、その準備段階でいろいろな問題が発生します。

① 財産・債務がどこに何があるのかそもそも分からないという点です。

 例え、家族、夫婦であっても、どこに預金がいくらあるとか、どの市町村のどこに不動産(土地や建物)があるとか、株、金地金、ゴルフ会員権、デジタル遺産(ネット銀行、ネット証券、ポイントなど)といったものが何があるのかなど、正確に把握している人はほとんどいなくて、知らないというのが一般的ではないでしょうか。亡くなった方が、メモとして「財産・債務の一覧リスト」を作成していてくれればよいでしょうが、「エンデイングノート」などを作成している人は余りいないかもしれません。そうなった場合に、相続人が、自分で一から財産・債務を探そうとすると、手がかりもノウハウもなければ相当な労力と苦労が必要となります。

② 預金の払戻がすぐにできなくなります。

 死亡直後は、お金の支払は待ってくれませんが、葬式代、病院代の支払や当面の生活費などで必要なお金を引き出すことができなくなります。この点、民法改正で、預貯金の一定割合(預金残高×法定相続分×1/3、上限1行当たり150万円まで)が引き出せるようになりましたが、手続にはやはり時間と労力がかかります。

③ もし仮に、相続人の中に認知症の方や脳梗塞で入院しているような方がいる場合には、そのままではその者を相続人とする遺産分割をすることもできません。

 このような場合、その相続人には判断能力がありませんので、代りに法律行為を行ってもらうために、家庭裁判所に申立てをして法定後見人を選任してもらう必要があります。しかし、法定後見人の選任には、時間(選任まで数か月かかる。)と費用(被後見人が死亡するまでの間は後見人に対する報酬を毎月数万円支払う必要があります。)がかかりますし、最終的には法定相続分に応じて分割するしかありません。 

 このようなデメリット(不都合)を避けるためにも、ぜひとも元気なうちに遺言書を作成しておきたいものです。

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