基礎から学ぶ遺言相続講座(相続12)
特別寄与料とは?
特別寄与料とは、2018年(令和元年)7月1日施行の民法相続法の改正によりできた制度です。
被相続人に対して、無償で療養看護その他の労務を提供したことにより、被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした被相続人の親族(特別寄与者)は、相続開始後、相続人に対して、特別寄与者の寄与の定めた額(特別寄与料)の支払を請求することができるとなっています(民法第1050条)。この場合、請求の相手となる相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に法定相続分又は指定相続分を乗じた額を負担することになります。
こちらも、特別寄与料の支払について、当事者間に協議が整わないとき、または協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。
注意しなければならないのは、特別寄与料の請求を家庭裁判所に対して申し立てる期限が、特別寄与者が、相続の開始と法定相続人の両方を知ったときから6ケ月以内に申立てをする必要があり、期限が非常に短いことです。
このような特別寄与分は、例えば、相続人である長男の妻が、被相続人の療養看護に努めた場合、相続人でない長男の妻は、寄与分の主張をすることができないこと、家事審判の中で夫(長男)の寄与分の中で考慮されることがあるかもしれないこと、夫(長男)が先に死亡したときは全く考慮されないなどの不都合(不公平感)を解消するために、新たな制度としてできたものです。
特別寄与料については、相続税法上の課税の取扱いが問題になってきます。
特別寄与料に関する相続税法の取扱いについては、特別寄与者が、特別寄与料を受け取った場合(支払うことが確定した場合)には、特別寄与料の額に相当する金額を被相続人から「遺贈」により取得したものとみなされて、相続税が課税されることになります(相続税法第4条第2項)。
一方、相続人が支払うべき特別寄与料の額は、その相続人に係る相続税の課税価額から控除(債務控除)することになります(相続税法第13条第4項)。
なお、特別寄与者は、一親等の血族及び配偶者以外の者であることから、相続税額の計算に当たっては、相続税の二割加算の対象となります(相続税法第18条第1項)。
さらに、もし仮に、特別寄与者である長男の妻が、被相続人から生前贈与を受けていた場合には、特別寄与者である妻は「遺贈によって財産を取得した者」に該当しますので、被相続人から生前贈与を受けていたその贈与財産については、相続開始前3年以内贈与に該当するときには、生前贈与加算として相続財産に加算されて計算することになっていますので注意してください(相続税法第19条第1項)。
最後にもう一つ、相続税の期限後に特別寄与料の支払が確定した場合(大半のケースがこれに該当します。)には、特別寄与料の請求をした者は、特別寄与料の支払が確定した日から10ヶ月以内に相続税の申告をしなければなりません。これに対して、特別寄与料の支払いをした者は、特別寄与料の確定後4か月以内に限り、更正の請求をすることができますので、注意してください。