基礎から学ぶ遺言相続講座(相続16)

債務はどのように承継されますか、また、遺産分割で特定の相続人に債務を承継させることができますか?

 共同相続人が、単純承認をした場合には、債務は法定相続分に応じて当然に分割されて承継されることになります。例えば、共同相続人が子供2人で、債務が1,000万円であった場合には、各相続人は500万円ずつ債務を承継することになります。

 それでは、被相続人が、遺言で相続分の指定を行った場合、債務についても指定相続分で承継することができるでしょうか?

 もし、指定相続分での債務の承継を自由に認めることになると、例えば財産を相続しない債務超過にある相続人に債務を承継させてしまうと、債権者は予期せずに十分な弁済を受けれなくなってしまいます。つまり、最低でも法定相続分に従って債務が分割されると期待していた債権者からすると、知らないうちに免責的債務引受(債務引受をした相続人以外の者は債務を免れるということ)をしたことになってしまい、債務を承継することになる資力のない相続人からは回収不能ということになってしまいます。

 このため、債権者の同意なしには、指定相続分での債務の承継は認められないことになっています。ただし、厳密にいうと、指定相続分での債務の承継を債権者には対抗できないということであり、この場合において債権者が同意をすれば、指定相続分での債務承継も認められることになります。

 同様に、遺産分割で特定の相続人に債務を承継させることは、債権者の同意なしには認められません。こちらも、債権者の同意なしには、遺産分割での債務承継を対抗できないということになります。

 実務では、被相続人が、借入金によって建設した賃貸マンションを所有していた場合に、このマンションを相続することになる相続人が、金融機関の借入金についても遺産分割協議書の中で承継することを記載することがよくあります。このようなケースでは、金融機関の同意がないと、遺産分割協議書の内容をもって金融機関には対抗できない(債務を免れる相続人は金融機関にこれを対抗できないということ)ということになりますので、注意が必要です。このケースでは、事前に遺産分割協議書の内容について、案の段階で金融機関に相談を行い、他の相続人については免責的債務引受となることの同意を得ておく必要があります。

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