基礎から学ぶ遺言相続講座(相続22)

遺留分とは?

 遺留分とは、遺留分権利者である被相続人の一定の範囲の遺族としての生活保障遺産形成に貢献した遺留分権利者の潜在的共有持分の清算等を目的とする制度になります。兄弟姉妹以外の相続人には、この遺留分があります(民法第1042条第1項)。

 遺留分の割合は、①直系尊属のみが相続人である場合には3分の1、②それ以外の場合には2分の1となっています(民法第1042条第1項)。

 具体的なケースで見ますと、

①相続人が配偶者と子供2人のケースでは、配偶者が4分の1、子がそれぞれ8分の1

②相続人が配偶者と父母のケースでは、配偶者が3分の1、父母がそれぞれ6分の1

③相続人が配偶者のみ(又は子のみ)のケースでは、2分の1

となります。

 平成30年の民法の改正により、遺留分減殺請求権が遺留分侵害額請求権に改められたことにより、遺留分権利者が受遺者又は受贈者に対して遺留分侵害額に相当する金銭の請求することができる権利へと大きく変わりました(民法第1046条第1項)。

 遺留分の算定方法については、①相続人に対する生前贈与は相続開始前10年以内にされたものに限り、②相続人以外の者に対する贈与は相続開始前1年以内にされたものに限り(当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日よりも前にしたものについても同様とします。)、それぞれ遺留分算定のための財産の価額に算入されることになります(民法第1044条)。

 (計算式)

  遺留分の対象となる財産 = 死亡時の相続財産 + 相続開始前1年以内の贈与 ー 債務の全額

                            ※相続人のケースは10年以内

 遺留分権利者は、兄弟姉妹以外の相続人であり、具体的には、配偶者、子、直系尊属がこれに該当します。子の代襲相続人も、遺留分権利者になり、被代襲者である子と同じ遺留分を有します。

 注意したいのは、相続欠格や廃除は、代襲原因となっており、その子が代襲相続人になりますので(民法第887条第2項)、遺留分権利者となるということです。そうしますと、例えば、被相続人が、仮に遺言により「全財産を配偶者に相続させる」と定めて、併せて「長男を廃除する」としていたとしても、長男の子がいれば長男の子が遺留分権利者となりますので、ある意味で長男には財産を渡さないとしようとした意思が完全には達成されないことになるかもしれません。

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