基礎から学ぶ遺言相続講座(相続28)
相続税の申告期限までに遺産分割が成立しなかった場合はどうなりますか?
相続税の申告期限までに遺産分割が成立せず、未分割のままとなった場合には、相続税申告上、次のようなデメリットがあります。
① 相続税が軽減される規定が活用(適用)できない。
例えば、配偶者は取得財産が1億6千万円又は法定相続分までの多い方までは無税となる配偶者税額軽減や、自宅の敷地、事業用建物の敷地、賃貸物件の敷地について評価額が大幅に減額できる小規模宅地の特例が適用できなくなります。
② 農地の納税の猶予の規定(農業相続人が死ぬまで耕作すると相続税が免除される)が適用できない。
③ 延納(分割払い)や物納(相続した土地等で納付する)ができない。
このため、特に遺産分割が未分割のままである場合、①の配偶者税額軽減や小規模宅地の特例の適用ができませんので、一旦は未分割として相続税の申告書を提出することになりますので、多額な相続税を支払う必要があることになります。
もちろん、相続税の申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込み書」を提出し、後日、3年以内に遺産分割が成立した場合には、更正の請求又は修正申告を行うことにより、配偶者税額軽減や小規模宅地の特例の適用を受けることができますので、その時点では納めすぎとなった税金の還付を受けることができます。
仮に、3年以内に遺産分割が成立しなかった場合は、3年経過した日の翌日から2箇月以内に、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出しておくと、その後に遺産分割が成立した際に、納めすぎの税金の還付を受けることができます。ただし、こちらは、事前に提出することができず、また、提出が1日でも遅れると、一切適用が受けられなくなりますので、注意が必要です。
このように遺産分割が未分割のまま相続税の申告期限を迎えてしまうことになると、納税資金の手当てに大きな問題が生じますので、これを避けるためには、相続人間での遺産分割協議の合意を得ることが非常に重要になってきます。