基礎から学ぶ遺言相続講座(相続24)

遺産分割での具体的相続分の算定と、遺留分の算定とは、どこが違いますか?

 気をつけるべき点は、両者の違いということになります。

 特別受益は、遺言書が存在しないために、相続人全員で遺産分割協議をする場面で登場するものであり、特別受益となる生前贈与は、遺産について各人の取り分を具体的に計算する際に考慮されるものであるということです。

 これに対して、遺留分は、遺言書が存在する場合に、生前贈与によって遺留分が侵害されているときに、遺言によって遺留分を侵害された相続人が、自己の遺留分を取り戻すときに登場するものです。

 つまり、特別受益が登場するとき(=遺言が存在しないときになります。)は遺留分は登場せず、遺留分が登場するとき(遺言があるときになります。)は特別受益が登場しないということです(両者は並び立つことはないということです。)。

 ところで、遺産分割をする際に特別受益を考慮して具体的相続分を算定する計算式と、遺留分を算定する計算式では、ともに生前の贈与を考慮する点など、両者の計算式は非常によく似ていますが、違いもあります。

1 遺産分割をする際の具体的相続分の算定(特別受益者がいる場合の具体的な相続分の算定)

 ①相続開始時の財産の価額 + 特別受益とみられる贈与の価額 = みなし相続財産額

 ②みなし相続財産額 × 各自の法定相続分 = 具体的な相続分

 ③具体的相続分 ー 特別受益の額(贈与又は遺贈) = 特別受益者の具体的な相続分              

2 遺留分の算定

  遺留分は、遺言書が存在する場合に問題になります。

 ①死亡時の相続財産 + 相続開始前1年以内(※)の贈与 ー 債務の全額 = 遺留分の対象となる財産

            ※相続人に対するものは、10年以内の贈与

 ②遺留分の対象となる財産 × 各自の法定相続分 = 各人の遺留分

3 両者の違いは、次のとおりになります。

 ・特別受益の計算上は、とりこむ生前贈与に関して取り込む年数の期間的な制限はありません。ただし、相続開始の時から10年を経過している場合に、遺産分割を行うときには、特別受益の額は考慮されないことになっています(民法第904条の3)。

  これに対して、遺留分では、相続人に対するものは10年以内、相続人以外の者に対するものは1年以内のものに限られます(民法第1044条)。

 ・特別受益に該当する贈与は、婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与など大きなものに限定されますが(民法第903条)、遺留分では、このような限定はありません。

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