基礎から学ぶ遺言相続講座(相続29)

遺産分割で共有とした場合の問題点は?

 よく遺産分割がなかなかまとまらないので、今回の相続(父が被相続人で、相続人は母、長男、長女のケース)では、とりあえず所有不動産は共有にしておこうということがあります。

 しかし、これは問題の先送りでしかありませんし、後々非常に大きな問題が発生します。

 なぜならば、共有不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要となるからです。ということは、一人でも売却に反対する者(反対の理由としては、そもそも売却すること自体が反対の場合と売却価額が反対の場合などいろいろな理由が考えられます。)がいれば、売却できなるなるというリスクがあるということです。

 さらに、もし相続人の中の誰かに相続が発生すると、相続人の人数がさらに増えて、相続人全員の同意を得ることがより困難になります。

 したがって、不動産については、相続手続で安易に共有名義にしない方が良いということです。

 なお、共有名義にすることが全くいけないかというと、そうではありません。

 例えば、すぐに売却する予定の不動産であれば、売却代金の手残り金額を相続人間で法定相続分に応じて分配するといったケースもよくあります。このようなケースでは、共有名義とすることは全く問題ありません。

 特に、相続した不動産について、①小規模宅地の特例(土地の評価額が減額されます。)の適用を受けるケースや、②地積規模の大きな土地の評価方法(500㎡以上の土地については一定の計算により評価額の減額があります。)の適用があるケースや、③空き家譲渡の譲渡所得の特例(特別控除として3,000万円を控除できます。)に該当するようなケースでは、むしろ共有名義とすることによって、①及び②については、共有者全員が適用を受けることができるようになります。また、③については、共有者全員が特別控除を受けられますので、納める所得税が大幅に少なくなります(場合によっては納税額は0円となります。)。

 このように共有名義とする方が、税務上の様々なメリットを受けることができることもありますので、専門の税理士によく相談していただくことが大切です。

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