基礎から学ぶ遺言相続講座(相続32)

代償分割とは?

 代償分割とは、特定の相続人(例えば、被相続人と同居していた長男)が、特定の遺産(自宅の土地建物)を取得することとしますが、その者(長男)は他の相続人(長女)に対して代償金を支払うという遺産分割の方法です。

 このような代償分割は、事業用の不動産、同族会社の株式、農地、居住用の自宅などの財産を相続によって細分化してしまうような遺産分割を避けるためによく利用されています。

 代償金の金額は、必ずしも法定相続分に応じた金額でなくてもよく、当事者間で合意した金額であればいくらでも構いません。

 代償分割のポイントは、代償金の金額をいくらとするかという点にもありますが、代償金の支払をする相続人が代償金を支払うお金を用意できるかどうかという点になります。つまり、代償金の支払ができないと、代償分割の方法による遺産分割の話はまとまりません。

 したがって、推定被相続人としては、自宅等の財産を相続する相続人に対して、代償金の資金手当てを予め用意してあげることが大切になります。

 代償金の支払資金を用意する方法としてよくある方法は、被相続人が予め生命保険契約に加入しておいて、死亡保険金の受取人を代償金を支払う長男としておきます。こうすることで、保険事故が発生した場合に、死亡生命保険金は受取人である長男の固有の財産となり、この死亡保険金は遺産分割の対象にはならないことになります。つまり、長男は別枠で資金を確保することができます。長男は、受け取った死亡生命保険金で長女に対して代償金を支払うことができます。

 なお、相続税の計算では、相続によって取得した財産の額を計算する上で、代償金を支払った者は取得した遺産額から代償金の額を控除し、逆に代償金を受け取った者は取得した遺産額に代償金の額を加算することになります。

 ただし、長男は、自宅のほかに死亡生命保険金も受領しており、長女と比べるとより多くの財産を取得することになりますので、長女からすれば不公平な感はあります。相続税の申告書を見れば、非課税となる生命保険金の記載もありますので、その辺りの事情は長女も把握することができます。

 相続人同士の間では、調整用としてお金をある程度もらうことができたので、そのような遺産分割の内容(長男が財産の大半を相続するということ)も納得しているということあればよいでしょうが、かといって長女が納得しないからといっても、代償金の額を含めて法定相続分で計算してあれば分け方に法律的な問題はありません。長女としては、そのような遺産分割協議書には署名押印しないという形で抵抗手するしかないでしょう。

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