基礎から学ぶ遺言相続講座(相続33)

換価分割とは?

 換価分割とは、例えば、遺産である不動産を売却して、諸費用(仲介手数料、測量代、契約書に貼付する印紙代、司法書士への報酬・登録免許税、建物取壊し費用など)を除いた残金を法定相続分などに従って相続人間で分けることをいいます。

 換価分割は、相続人の意向としては、遺産はお金の形でほしいが、相続財産としては自宅しかなく、このままでは法定相続分で分けることができない場合に、自宅を売却して金銭で分けるといったような形で利用されます。遺産分割の方法の中には、共有分割の方法もありますが、不動産を共有にすると、後々処分する際には共有者全員の同意が必要になるなど複雑な問題となるので、これを避ける方法としてこの換価分割が利用されています。

 遺産分割協議書に明確に換価分割であることが記載されていれば、相続人間での換価代金の交付に関して贈与税の問題は生じません。

 換価分割にすると、不動産譲渡に伴う登記手続費用、登録免許税、売買契約書の印紙代、不動産仲介手数料などの諸経費のほか、不動産の譲渡に伴う所得税(保有期間5年以下の短期譲渡は約20%、5年超の長期譲渡は約40%)がかかりますので、これらを差し引くと、場合によっては、最終的な手取り額は不動産の評価額と比べるとかなり減ってしまいます。これは、換価分割を選択した以上、やむを得ないことかと思います。ただし、相続人間で公平に遺産を分けるという意味では、平等を確保する最も有効な方法でもあります。

 換価分割を選択した場合の問題点としては、自宅や事業用の土地建物を売却すると、住む場所がなくなるとか、事業が成り立たなくなるといった問題が生じますが、お金を欲しいという相続人がいる以上、これは避けることができません。こういった事態を防ぐには、遺言書を作成して、一人の相続人に自宅を相続させるようにしておくしかありません。ただし、他の相続人には、代りに代償金という形でお金を支払うことになりますので、この代償金を支払う資金の手当ても考えておかなければなりません。

 なお、注意したい点は、換価分割を選択することを相続人全員の合意ができたとしても、具体的な売却先、売却金額、売却時期などを巡って、相続人間での意見が対立することがあります。そうなると、売却手続が全く進まなくなるというリスクもありますので、できれば売却については誰かに一任(遺産分割協議書にその旨記載しておく。)しておく方が良いでしょう。

 

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