基礎から学ぶ遺言相続(相続35)
遺産分割協議が事実上できないケースとは?
次のようなケースは、事実上、相続人間での遺産分割協議が簡単に進みません。
1 未成年者(18歳未満)の子がいるケース
法律上は、基本的に親権者が未成年者の代理人となりますが、遺産分割は親と子の間では利益相反になりますので、家庭裁判所で特別代理人を選任し、その特別代理人を交えて遺産分割協議を行うことになります(民法第826条)。
なお、未成年者が例えば17歳であるなど、成年まであと1、2年のケースでは、場合によっては成年になるのを待って遺産分割協議を行う方法もあります。
2 行方不明者がいるケース
家庭裁判所を通じて不在者管理人を選任して、その不在者管理人を交えて遺産分割協議を行うことになります(民法第25条)。
3 認知症の者がいるケース
認知症の者は、認知症の程度にもよりますが、判断能力がないと認められる場合には、契約、遺産分割協議、遺言などの法律行為をすることができません。
したがって、認知症になった者との間で事前に任意後見契約を締結していなければ(任意後見契約に関する法律参照)、家庭裁判所を通じて法定後見人を選任するしかありません(民法第7条、8条、第843条)。
これらの場合には、いずれも家庭裁判所を通じて、本人に代わる一定の代理人を選任することになりますので、選任に関しては、当然のことですが、費用と時間(数か月)がかかります。
しかも、家庭裁判所によって選任された特別代理人、不在者管理人、法定後見人は、いずれも遺産分割協議の場では、民法で定める本人の法定相続分を主張することになりますので、家族にとっては思うような(?)遺産分けを行うことができないこともあります。
いずれにしても、これらに該当するケースでは、どうするべきについて、弁護士、司法書士に相談した方が良いでしょう。