基礎から学ぶ遺言相続講座(遺言29)
遺言の有効性を争うときはどうすればよいか?
遺言の有効性(遺言が無効であること)を争う場合には、遺言の有効性を争う者が、地方裁判所に対して、遺言書無効確認の訴えを提起する必要があります。
遺言書が無効であると主張する理由としては、①遺言書が法律の定めた規定に反していること、②遺言者は、遺言書作成当時、既に判断能力(遺言能力)を失っていたこと、の2つが考えられます。
①の遺言書の形式が法律に則って作成されているという点については、
公証役場で作成する公正証書遺言に関しては、公証人という法律のプロが作成しますので、この方式が問題になることはほとんどありません。
これに対して、自筆証書遺言について、そもそも、全文、日付、氏名を自書し、押印するという要件を満たさないといったこともありえます。また、記載内容が、意味不明であるとか、財産の特定が不十分であるとか、遺言書の解釈が問題になることもあります。
②の遺言書作成当時の判断能力の点については、
公正証書遺言では、公証人が直接本人の状態を観察・確認し、判断能力に問題がないと判断した後に作成しますので、通常は、裁判において、遺言者には遺言書作成当時に判断能力がなかったと判断されるケースはほとんどないといってよいでしょう。
これに対して、自筆証書遺言では、作成時の判断能力について第三者が事前に確認しているわけではないので、作成者本人の作成当時の判断能力の有無を争うことは十分に可能ということになります。これを手当する方法としては、作成に当たって予め医師の診断書を作成しておくとか、作成当時の様子をビデオなどに録画しておくことといった方法が考えられます。
いずれにしても、裁判で争うとなると、一度、弁護士さんに相談した方がよいと思われます。
一方で、後々、裁判で争われないようにするためには、費用や手間の問題もありますが、作成に当たっては、やはり公正証書遺言で作成しておくことが望ましいでしょう。