基礎から学ぶ遺言相続(遺言32)
遺言で相続人を廃除したいときはどうすればよいでしょうか?
推定相続人(子)が、親から借金を繰り返して親の金を使ってしまったり、親に暴力をふるうような場合には、遺言によって推定相続人の地位(相続権)を剥奪することができます(民法第892条)。これを「廃除」といいます。廃除は生前に推定被相続人が家庭裁判所に申し立てることによって行いますが、生前に廃除を行うと推定相続人との関係で暴力等が心配なときには、遺言で廃除をすることもできます。この場合には遺言執行者が家庭裁判所に対して申立てを行います(民法第893条)。
このように、遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱を加えたり、又は推定相続人に著しい非行があったときは、被相続人又は遺言執行者は、その推定相続人の「廃除」を家庭裁判所に請求することができます(民法第892条)。しかし、被相続人が、生前に家庭裁判所に廃除の申立てをすると、ますます暴力がエスカレートすることもありますので、生前での廃除の申立てを行うことは相当に困難ともいえます。
また、最終的に廃除が認められるかどうかは、家庭裁判所の判断となっていますので、必ず認められるとは限りませんので、期待した通りの廃除という結果が得られるかどうかも保障がありません。
廃除が認められた場合には、その推定相続人は相続人の地位を失います。ただし、廃除を受けた推定相続人に子がいれば、その子が自分の親に代わって相続(代襲相続)することができますので、その意味では、被相続人の意思が、廃除した相続人の子供ら家族も含めて一切の財産を与えないという意思であったときには、被相続人の意思が完全には満たされないことになります。
結局、遺言で廃除の請求をすることは、それが認められる可能性も不透明であり、かつ、様々なリスクもありますので、遺言で廃除をすることを選択することは非常に難しい判断といえるでしょう。