基礎から学ぶ遺言相続講座(相続41)

相続登記の義務化とは?

 これまでは、相続が開始した場合、相続人は相続登記をすることは法律上は義務とはされていませんでした。

しかし、東日本大震災での災害復興における所在不明土地所有者が多数存在したことから、土地収用等がなかなか進まず、復興の妨げになっていたという問題(所有者不明土地問題)がありました。所有者不明土地は、現在、全国で約410万ha(2016年時点)となっており、九州の面積を上回る状況となっており、今後もさらに増加することが見込まれています。

 もし、相続登記が行われないまま数次相続が発生した場合には、相続人の数が多数になり、相続人を探して確定するだけでも、大変な労力と費用がかかってしまいます。となると、相続人も、要らない、価値のない不動産については、相続登記をあえてしないという選択をすることになっていました。

 そこで、この問題を解決する一つの方法として、不動産登記法を改正し、所有権の登記名義人に相続が発生した場合には、相続によって所有権を取得した相続人は、相続開始があったことを知った日から3年以内に所有権移転登記をすることが義務化されることになりました。この登記義務は、既に相続したけれども、相続登記が未了の土地の所有者についても適用されます。

 また、所在不明土地の発生を防止するため、登記名義人の氏名又は名称及び住所が変更した場合には、氏名・住所変更等の登記を申請することも義務化されました。こちらは、2年以内の申請義務となっています。

 このほかに、相続人のうちの一人が単独で申請できる、簡易な申出による報告的な「相続申告登記制度」も新設しました。これは、相続登記の申請義務を簡易に履行するためにできた者であり、所有権登記名義人について相続が開始した旨及び自らが所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出る制度です。あくまでも遺産分割協議が成立するまでの過渡的な一時的な登記にすぎませんので、このままでは不動産を売却することはできません。後日、正式に遺産分割協議が成立した場合には、相続人全員による相続登記を申請することになります。

 この登記義務に違反すれば、相続登記は10万円以下の過料(氏名住所変更登記は5万円以下)に処せられることになりますが、果たしてすべての案件について、過料に処せられるかは不透明です。

 なお、施行は、令和6年4月1日からとなっております。

 このほかに、被相続人名義の不動産目録を証明する制度(「所有不動産記録証明制度」)も創設しました。これは、自分が所有権の登記名義人として登記されている不動産を、法務局が全国レベルで名寄せして一覧表にして証明してもらえる制度ですので、相続の際に遠隔地等の所有不動産を調査する手間や負担も軽減できて、かつ、調査漏れがなくなるといった点で非常に有効な相続財産調査の方法になります。

 

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