基礎から学ぶ遺言相続講座(相続42)

土地所有権の国庫への帰属とは?

 相続によって土地を取得したけれども、田舎の土地や空き家でほとんど価値もないし、管理もできないので土地を手放したいが、どうしたらよいでしょうか?、というお悩みの方は多いと思います。

 要らないならば、相続放棄をすればよいのではという意見もありそうですが、預貯金は欲しいけど、負動産は要らないといったケースでは、相続放棄では解決することができません。

 今回、所有者不明土地問題に対応する解決策として、令和3年に民法等の一部を改正する法律及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律ができました。

 これは、一定の手続を経て、土地所有権を国庫に帰属させるものですが、要件が余りにも厳格すぎて、実際にはほとんど利用することができないかもしれません。

 国庫帰属のための要件としては、①更地であること、②土地に抵当権などが設定されていないこと、③通路として使用されるなど他人による使用が予定されていないこと、④土壌汚染対策法による特定有害物質により汚染されている土地でないこと、⑤境界等ははっきりし争いがないこと、⑥崖がある場合その管理にあたり過分の費用等を要しないこと、⑦管理又は処分を阻害する工作物等がないこと、⑧除去しなければ管理又は処分することができないような有体物が地下にないこと、⑨隣接土地所有者との裁判によらなければ管理又は処分をすることができないものでないこと、⑩その他通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地でないこと、があります。

 そうしますと、建物解体費用、抵当権の抹消費用、境界確定のための測量費用、土壌汚染の調査費用などが必要になります。

 このような条件を満たす土地であれば、一般市場で売却することができますので、あえてこの制度を利用することはないと思われます。逆に、価値もないし、管理ができないといった要らない不動産については、ほとんど利用できないということになります。

 さらに、実際に国庫に引き取ってもらうに当たっては、10年分の土地管理費相当額の負担金を支払う必要があります。法務省の資料では、例示として、200㎡の宅地で約80万円、粗放的な管理で足りる原野で約20万円という試算となっています。

 このような厳格な要件や多額の費用がかかることから、この制度は、国民が要らない土地を国に引き取ってもらえる制度というよりは、国民が自発的に相続登記を進めるしかないことを間接的に促す意味しかないということになります。したがって、この制度を活用する事例は、ほとんど見込まれないと思われます。

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