以下では、終活に向けて、あるいは、相続に向けて、今後どのように進めていったらよいかについて、簡単に説明いたします。
考えるに当たっての重要なポイントは、
①争族対策(相続で相続人間でもめないようにすること)、
②納税資金対策(相続税を支払えるだけの資金を確保すること)、
③相続税節税対策(相続税を減らすための対策を講じておくこと)
の3点です(重要度もこの順番となります。相続税対策が一番ではありません。)。
以上のポイントを踏まえて具体的にどのように取り組むべきかについては、以下のとおりになります。
【終活に向けた第一歩】
①「財産・債務の一覧表」(デジタル資産も含めて)を作成します。
※亡くなったときに残された家族が困らないように、「エンディングノート」や「財産・債務一覧表」などに残しておくとよいでしょう。デジタル資産については、パソコン、スマホのパスワードやネット銀行などのID、パスワードも分かるようにメモしておきましょう。
②家族関係が複雑な方は、自身の「戸籍謄本(除籍謄本)」を予め収集しておき、家族関係図を書いておきます(推定相続人を把握します。)。
※令和6年3月から、相続人が最寄りの市役所にて被相続人の生まれてから死亡したときまでの戸籍証明書を取得することができました。
③「概算での相続税の試算表」を作成します(相続税の申告の要否を確認します。)。
※自分で試算できない場合は、税理士の無料相談などを利用します。
④遺産分けの仕方の希望を考えます(場合によっては、遺言書の作成の要否を検討します。)。
※土地・建物をたくさん保有している方は、誰にどの不動産を分けるを考えてみます。
※子のいない夫婦やおひとり様は、死後に自分の財産を誰にあげたいかを考えてみます。
⑤葬式の在り方、お墓や誰も住まなくなった実家をどうするかを考えます。
※残された家族がどうすればよいか困らないように伝えたい思いを考えてみます。
※自宅については、処分してよいかどうかを考えてみます。
【争族争い・認知症への対策】
①具体的に誰に何を相続させるかを検討します(遺産の分け方を「財産一覧表」に記載して具体的に検討します。)。
※遺産の分け方によって家族全体の相続税額も変わってきますので、税理士に相談した方がよいでしょう。
②「遺言書」を作成するかどうかを検討します(遺言書は、公正証書遺言、自筆証書遺言、法務局保管の自筆証書遺言のどれを選択して作成するかも考えます。)。
※できれば専門家のアドバイスを得て「公正証書遺言」を作成した方が良いでしょう。
※「全財産を〇〇に相続させる。」旨の遺言書を作成する場合は、相続人が遺留分の支払資金が用意できるかどうかも検討しておきます。
③認知症に備えて「任意後見契約」や「家族信託」を締結することを考えます。
※弁護士、司法書士、行政書士、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。
④相続人が相続税の納税資金又は遺産分割での代償金の支払資金を用意することができるかを考えます。
※財産として預貯金が少なくて納税資金が足りないと見込まれる場合は、生命保険契約への加入を考えます。
※遺産分割で相続人の一人に財産の大半を相続させるときは、その相続人が代償金を支払うことができるかを考えます(同じように生命保険契約への加入を検討します。)。
【相続税対策(生前対策)】
➀まずは一番大切なことは、自身の老後資金が確保されているか、住まいは確保されているか、残された人生をどう生きたいか(何をしたいか)、を考えてみます。
※年金収入、株式配当金、賃料収入などの収入は年間いくらであるか、預金株式の残高はいくらあるか、その上で平均寿命(あるいは100歳)まで生きた場合のトータルの生活費はいくら必要か、を計算して、過不足はどうなっているか試算してみます。
➁生前贈与を活用するかどうかを検討します(暦年贈与、相続時精算課税、贈与税の配偶者控除、住宅取得等資金贈与、教育資金一括贈与、結婚・子育て資金一括贈与など)。
※令和6年1月からは、相続時精算課税贈与にも基礎控除が毎年110万ありますので、暦年贈与といずれを選択するかよく検討しましょう。
※ただし、それぞれの贈与の方法には、メリット・デメリットがありますので、必ず事前に税理士に相談した方が良いでしょう。
➂生命保険契約に加入すること(年齢からいって加入できるか)を考えます。
※死亡生命保険には非課税規定があります。また、納税資金の確保もできます。
④土地などの不動産を有効活用するかどうかを考えます(更地に賃貸マンションを建設するなど)。
※賃貸マンションの建設は、メリットとデメリットがありますし、賃貸経営の収支見込みも検討する必要があります。具体的な検討に当たっては、税理士などの専門家に相談するのがよいでしょう。
⑤養子縁組(孫養子など)を行うことを検討します。
※養子縁組は相続税の節税にはなりますが、家族間での紛争の元にもなりかねませんので、ご注意ください。