基礎から学ぶ遺言相続講座(相続18)

特別受益とは?

 共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けたり、生前に婚姻・養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与を受けた者がいた場合には、法定相続分を一つの目安として相続人間の公平を図るために、これらの遺贈や生前贈与などの特別な受益を考慮して具体的な相続分を算定すべきであるといえます(民法第903条)。このような婚姻・養子縁組などのための特別な利益を「特別受益」といいます。

 特別受益の内容としては、遺贈と生前贈与が考えられますが、このほかに、高等教育費用・留学資金、債務の支払、土地・建物の無償使用による利益などが、特別受益といえるかどうかが問題となり得ます。

 特別受益者がいる場合には、特別受益者の具体的な相続分の算定は、次のとおりとなります。

① 相続開始時の財産の価額 + 特別受益とみられる贈与の価額 = みなし相続財産額

② みなし相続財産額 × 各自の法定相続分 = 具体的相続分

③ 具体的相続分 ー 特別受益の額(贈与又は遺贈) = 特別受益者の具体的相続分

 ※特別受益の財産の評価は、相続開始時の価額(いわゆる時価で算定)となります。

 特別受益を加算の対象とする加算期間(持戻し期間)は、相続開始前〇年以内というような制約は全くありませんので、例え何十年も前の贈与であっても加算対象とすることになります。

 また、加算(持戻し)の免除については、被相続人が異なる意思を表示したときは、それに従うことになっていますので、持戻し計算の免除は可能となっています。なお、民法第903条第4項では、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他方に対して、居住用建物又はその敷地を遺贈又は贈与したときは、被相続人は持戻し免除の意思表示をしたものと推定されます(反証があれば覆ります。)。

 ※相続税の計算においては、生前贈与について相続税との一体課税の調整を図るといった観点から、次のような取扱いとなっています。

①暦年贈与に当たる生前贈与(特別受益に該当しないものであっても)については、相続開始前3年以内(※令和6年1月1日以降の贈与は、順次7年以内に延長されます。)の贈与について加算対象としています(贈与税の基礎控除110万円以下の贈与であっても、また、贈与税の申告の有無を問わず、加算対象になります。※令和6年1月1日以降は、順次加算期間が7年間に延長されますが、延長された4年間の贈与については、合計100万円までは加算対象になりません。)。

②相続時精算課税の適用を受けた贈与は、相続開始前〇年以内という制約がなく、すべての贈与を持戻し計算として加算対象としています(※なお、令和6年1月1日以降は、相続時精算課税には毎年110万円の基礎控除ができますので、この分は相続財産への加算は不要になります。)。

③加算(持戻し)財産の価格は、ともに贈与時の価額(相続税評価額で算定)を基準としています(※遺産分割では、相続時の時価で持ち戻しをします。)。

 このように、相続税法では、民法の特別受益の規定とは取扱いがかなり違いますので、注意が必要になります。

 

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