基礎から学ぶ遺言相続講座(相続10-1)

相続放棄をするとどうなるか?

 相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされる(民法第939条)。

 その結果、他の共同相続人が相続することになります。

 なお、相続放棄は、一度選択すると、原則として取り消しができないことになっています。

 ただし、死亡による生命保険金や死亡退職金(いわゆるみなし相続財産)については、被相続人の遺産ではなく、受取人固有の財産となりますので、相続放棄をした者でも、死亡保険金や死亡退職金を受け取ることはできます。

 注意すべき点は、相続放棄は、相続開始後になされるものであり、代襲相続の代襲相続原因とはならないということです。これは、民法第877条第1項が、代襲原因を、被相続人の子が、相続の開始以前に①死亡したとき、②欠格事由に該当したとき、若しくは③廃除によって、その相続権を失ったときに限定しているからです。

 ところで、相続税法では、相続放棄に関して、民法の規定とは異なる取扱いになっています。

① 遺産に係る基礎控除額は、3,000万円+600万円×相続人の数で算出されますが、この場合の相続人の数は、同順位の共同相続人が他にいる場合には、相続放棄があったとしても、その放棄がなかったとした場合の相続人の数とされている点です(相続税法第15条第2項カッコ書き)。

 つまり、相続放棄をした者も、基礎控除額の計算では、その放棄がなかったものとして、相続人の数にカウントされます。例えば、相続人が、妻と長男、長女の3人の場合に、長女が相続放棄をしたとしても、基礎控除額の計算上は、法定相続人の数は、妻、長男、長女の3人とします。

 また、相続放棄によって次順位の相続人に相続権がいく場合には、その相続放棄がなかったとした場合の相続人をもとに、相続人の数をカウントすることになります。例えば、第一順位の相続人が、子供1人であるときに子供が相続放棄をしたため、第二順の相続人の父母が相続人になったとしても、基礎控除額の相続人のカウント上は、第一順位の相続人の子1人でカウントすることになります。

② 生命保険の死亡保険金の非課税金額の計算(500万円×相続人の数)では、相続税法第12条第5号イが「被相続人の相続税法第15条第2項の相続人の数を乗じて算出した金額」としていることから、相続放棄をした者も、相続人の数のカウントに入ります

 つまり、民法上の相続人の数は、相続放棄をした者を含めませんが、相続税法上は、相続放棄をした者も含めますという違いがあります。

 ただし、相続放棄をした者が取得した生命保険金については、生命保険契約に係る相続税の非課税金額の規定の適用はありません(相続税法基本通達12-8)

 例えば、相続人が、妻、長男、長女の3人である場合に、長女が相続放棄をしたときには、生命保険の非課税金額は500万円×3人=1,500万円であるが、生命保険金(2,000万円)を取得したのが妻(1,000万円)と長女(1,000万円)であったときには、長女には非課税規定が適用されないということになります。

 なぜなら、相続税法第3条第1項本文は「その者が相続人(相続を放棄した者及び相続権を失った者を含まない。・・・「第15条第2項に規定する相続人の数」という場合を除き)であるときは、当該財産を相続により取得したものとみなし、その者が相続人以外の者であるときは、当該財産を遺贈により取得したものとみなす」としていることから、相続放棄をした長女は、第3条の適用に当たっては、相続人ではないことになりますので、(遺贈により生命保険金を)取得したものとみなされからです。さらに、相続税の非課税財産を規定する相続税法第12条第1項第5号は、「相続人の取得した第3条第1項第1号に掲げる保険金」としており、この場合の相続人とは、先の相続税法第3条第1項本文の「相続人(相続放棄をした者・・・を含まない)」を指しているからです。

 ここら辺りは、ややこしい条文の読み方となっていますので、注意深く読まないと、違いが分かりません。

 このほか、相続放棄をしたときは、次のような相続税法上の規定の適用がありませんので、不利益が生じますので注意が必要になります。

①代襲相続人となった被相続人の孫は、1親等の親族に含まれるため、相続税の2割加算の対象になりませんが、その孫が相続放棄すると、相続人ではないため、相続税の2割加算の対象になります。

②相次相続控除は、相続の放棄があったときは相続人ではなくなるため、適用を受けることはできません。

③相続を放棄し、相続人でない者については、債務控除の適用を受けることはできません。 

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