基礎から学ぶ遺言相続講座(相続31)
遺産分割に代わる書類には、安易にハンコを押さない?
正式な遺産分割協議書に代わる、次のようなケースで扱われる書類には、安易に署名押印をしないようにしましょう。
1 被相続人と同居する長男から、一方的に「すべての遺産は長男が相続するという内容の遺産分割協議書」が送付されてきて、これに署名・押印して返送してほしいとの申し入れがあったケース
⇒ 「後でやり直しをすればよいから」と言われることもありますが、やり直しされる保障はありません。また、仮にやり直した場合には、税務署から再度の遺産分割による財産取得に当たるとして、贈与税や譲渡所得税の課税がされることもありますので、注意が必要です。
2 相続税の申告期限が迫っているので、いきなり遺産分割協議書への署名押印と相続税申告書への署名押印を求められたケース
⇒ このような対応をする理由としては、配偶者税額軽減や小規模宅地の特例の適用ができなくなるからという説明をされることもありますが、このようなケースでは、一旦未分割で相続税の申告書を作成の上で申告書を提出します。ただし、一旦は特例の適用がない前提での相続税額を計算して納付するとともに、「3年以内の分割見込み書」を提出します。後日、申告期限から3年以内に遺産分割が成立すれば、更正の請求をしてそれらの規定の適用を受けることによって、納めすぎた税金の還付を受けることができます。
3 「特別受益証明書」の提供を求められたケース、「相続分のないことの証明書」の提供を求められたケース
⇒ これらの証明書は、いずれも相続登記を行うための便宜的な書類にすぎません。実際の事実関係が異なる場合(生前贈与は何も受けていないケースなど)には、後日争いとなりますので、注意してください。仮に、後になって、真意で作成したものではないとか、事実が異なるといった理由で、これらの書類の有効性を裁判で争うとなると、非常に時間と労力と費用がかかります。
くれぐれもこれらの書類には、安易に署名押印しないことが大切です。