以下に記載しました事例は、私が実際に携わった相続・相続税申告に関しての相談事例のほか、税理士会の無料相談などでの事例を参考にして、簡略化した事例を基に記載したものであり、実際の事例とは異なることをお断りします。

 それぞれの事例については、簡単なコメント(私見)を付けてあります。

(項目)

1 遺言

2 遺産分割

3 相続財産の調査

4 相続財産の評価

5 相続税の申告

6 相続対策・相続税対策(生前贈与など)

7 遺留分侵害額請求

8 相続財産の処分

(相談事例)

1 遺言

(事例1-1)「全財産を2人に各2分の1ずつ相続させる」旨の遺言書

 被相続人は、司法書士の立会いの下で公正証書遺言書を作成したが、内容は「全財産を長女及び孫(養子)にそれぞれ2分の1ずつ相続させる。」というものであった。相続財産は、自宅、マンション2棟、駐車場2ヵ所、店舗とあった。その後、被相続人が死亡したため、公正証書遺言書に基づいて長女及び孫が各2分の1ずつの共有とする相続登記を行った。

 ⇒ 相続争いを避けるために公正証書遺言書を作成したのは良かったのですが、遺言書の内容が「全財産を長女及び孫(養子)に各2分の1ずつ相続させる」といった内容であったため、結果的には、自宅、マンション、駐車場、店舗の全ての不動産について、長女と孫が各2分の1ずつの共有持分を有する状態となってしまいました。このため、長女と孫の2人が合意しないと売却処分をすることもできなくなってしまいました。今回のように、公証人の先生や司法書士などの専門家が遺言書作成に関与していても、遺言の内容はあくまでも遺言者の意思内容に沿って作成しますので、公証人の先生や司法書士などの専門家がこのように直した方が良いというような積極的なアドバイスはしないこともあります。したがって、自分だけで遺言書の文案を考えることによって、後々遺言を執行する段階になって困ってしまうような遺言内容になることは絶対に避けなければなりません。できれば遺言書文案の作成段階から、専門家にアドバイスを求めるべきでしょう。

(事例1-2)「全財産を相続させる」旨の遺言書

 被相続人(母)は、先の亡父の相続に際して、相続人である長女、二女が相続争いをして家庭裁判所の調停・審判まで行ったことから、母自身の相続に際しては相続争いにならないようにするために、後継ぎである長女夫婦(長女の夫は養子としていた。)に「全財産を長女及び長女の夫に各2分の1ずつ相続させる」旨の自筆遺言証書を作成した。母に相続が発生した後、長女夫婦は遺言書の内容に基づいて相続手続を行ったため、二女は、長女及び長女の夫に対して遺留分侵害額請求を行った。長女夫婦は農家であり、所有する土地は大半が農地のほかは自宅及び敷地であり、現金は余り所持していなかった。

 ⇒ 相続争いを避けるために「全財産を〇〇に相続させる」旨の遺言書を作成される方はよくいらっしゃいますが、このような遺言書を作成した場合には、他の相続人からは遺留分侵害額請求がされることは必至です。そのような場合に、相続財産が不動産ばかりで現金預金が余りないときは、全財産を相続した相続人にとっては、遺留分の支払いが困難になってしまいます。そうすると、遺留分額を支払うために、わざわざ相続した不動産の一部を売却するか、一旦相続した不動産の一部を他の相続人に譲渡するしかありませんが、この場合は当然ですが不動産を譲渡したことになりますので、余分な所得税(譲渡所得税)がかかることなってしまいます。せっかく遺言書を遺言書を作成したのに、結局は相続争いになって、しかも余分に不動産の譲渡所得税を支払うことになってしまい、何のために遺言書を作成したのか分からなくなります。こうならないようにするには、一つの方法ですが、遺言書の中では、少なくとも他の相続人に対しても遺留分に相当する不動産を相続させる旨書いておけばよかったと思います。

(事例1-3)遺言書が複数存在しており、遺言者の判断能力が問題となった

 被相続人(父)は、後継ぎである長男に対して、「全財産を相続させる」旨の公正証書遺言を作成した。その後、父の生前に遺言の存在を知った長女は、介護施設に入所していた父(認知症の疑いがあり)に「全財産を長女に相続させる」旨の自筆証書遺言を作成させた。長男と長女との間で、どちらの遺言書が有効かどうか紛争となり、長男は、家庭裁判所に遺言無効の調停を申し立てた。なお、調停に先立って、長男から、父が後の自筆証書遺言を作成した時点では認知症が悪化しており、判断能力がなかったとして、法定後見人の選任申立てがされていた。

  ⇒ 複数の遺言書が存在する場合には、内容が抵触する場合には後に作成された遺言書(公正証書遺言か自筆証書遺言かは問いません。)が有効となります。仮に「全財産を〇〇に相続させる」旨の遺言書が存在することを知ると、他の相続人は当然にその遺言書の内容に納得できないでしょう。生前にその遺言書の存在を知ってしまうと、今度は推定被相続人に依頼して自分に有利な遺言書を作成させたりしますし、あるいは、死後に遺言書を知れば、遺言書を作成した時点では被相続人は認知症等にかかっており判断能力がなかったとして、遺言書無効の調停・訴訟を提起したりします。こうなってしまうと、相続人同士が延々と訴訟をすることになってしまい、解決までに相当時間がかかりますし、弁護士費用等の費用も相当かかります。そして、何よりも兄弟姉妹が絶縁状態になってしまいます。こういった事態を避けたければ、やはり最低でも遺留分に配慮した内容の遺言書を作成すべきかと考えます(ただし、遺留分に配意した遺言書を作成しても、兄弟姉妹は絶縁状態になるかもしれません。)。

(事例1-4)子のいない夫婦の遺言書

 子のいない夫婦の場合、夫も妻もそれぞれが「相手(夫又は妻)に全財産を相続させる。」旨の遺言書を作成すればよいのでしょうか?

 ⇒ 子がいない夫婦では、残された配偶者が生活に困らないように、「全財産を夫(妻)に相続させる。」旨の遺言書を作成することが多いでしょう。仮に、このような遺言書を作成した場合に気になる点は、相手が自分よりも先に亡くなってしまったときには、もらう人がいなくなってしまうので、この遺言書自体は無効になってしまうことです。そのような場合に備えて、予備的遺言(妻が先に死亡したときは、自分の弟の子(甥・姪)に相続させるなど)をしておくかどうかも検討しておく必要があるかもしれません。

 もう一つは、夫が死亡して、遺言書に基づいて妻が全財産を相続したとしても、その後に妻が死亡したときは、妻方の兄弟姉妹などに自分の財産が渡ってしまうことです。先祖代々の土地などを相続して所有していた場合は、被相続人としては、残された配偶者が亡きあとは、自分の兄弟姉妹(甥姪)に渡したいという気持ちがある方もいるかもしれません。そのような場合は、妻にその旨の遺言書を書いてもらう方法もありますが、確実に実現されるとはいえません。他には受益者連続型信託という方法もありますが、費用がかなりかかります。そのような問題点まで検討して、遺言書の内容をどのように書くかは悩ましい問題です。

2 遺産分割

(事例2-1)不平等な内容のままでした一次相続時での「合意書(二次相続の際には一次二次通算で平等になるように調整する旨)」の効力

 被相続人Aは資産家で、相続人は妻B、長男C、二男Dの3人であった。遺産分割(一次相続)では分割内容を巡って相当紛糾したが、相続税の申告期限まで期間がなかったことから、妻Bが遺産の40%を相続し、残りをC、Dが40%、20%の割合で相続することとした。その際、C、Dの2者の間では、二次相続(妻の死亡時)では、一次相続・二次相続を通算して平等に遺産を分けるという「合意書」を作成した。二次相続が発生した際、Cは、「合意書」が存在するにもかかわらず、法定相続分により平等で分割すべきであると主張した。

 ⇒ 残念ながら、一次相続の段階でB、Cの2者で作成した「二次相続では一次・二次通算で平等にするように遺産分けを行う」という内容の「合意書」の効力は全く認められません。もちろんこの合意書に基づいて、相続人全員で一次・二次通算で平等となるような二次相続での遺産分割を合意できればよいでしょうが、一次相続で多額の遺産を相続した相続人から、二次相続では遺産は平等に分割することを求められると、家庭裁判所では、遺言書がない以上、法定相続人に基づいて平等に分割することを決めるしかありません。やはり一次相続で分割内容に納得がいかなければ、相続税の申告書の提出期限まで時間がなくても、絶対に遺産分割協議書には署名押印をしないということしか方法はありません。この事例では、税理士から受けた説明で、相続税の申告期限が迫っていて小規模宅地等の特例などが受けられないので多額の納税をしなければならなくなるという事情があったようですが、納得がいかなければ、相続税申告期限が迫っていても、遺産分割協議書に署名押印しないことが大切です。したがって、一旦は未分割であるとして小規模宅地の特例等を適用しないで計算した相続税の申告書を提出して納税も済ませておき、後日、3年以内に遺産分割が成立したときに小規模宅地の特例を適用した修正申告書又は更正の請求書を提出して税額の還付を受けるほかありません。なお、家庭裁判所で長い時間かかって遺産分割が成立しても、小規模宅地の特例については、適用対象宅地を取得した相続人全員の同意が必要です。適用の合意を巡って更に争いが続くことにもなりかねませんので、できれば遺産分割の調停の場で、誰が小規模宅地の特例の適用を受けるかについても合意しておく方がよいでしょう。注意すべき点は、家庭裁判所での調停がまとまらないなど、3年以内に遺産分割が成立していない場合は、3年経過する日の翌日から2か月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を税務署長に提出しなければ、一切特例の適用が認められないことです。この承認申請書の提出を忘れないように、期日管理を的確にしておかなければならないということです。

(事例2-2)申告期限までに時間がない遺産分割協議書へ署名押印してしまった

 被相続人の遺産は、自宅の敷地、駐車場、工場の敷地の3つの土地があった。相続人は、長男、長女の2人であった。遺産分割案は、相続税申告書を作成していた税理士が長男の意向に基づいて作成していた。申告期限間際になって、遺産分割協議書案の提示を受けた長女は、税理士から期限までに提出しなければいけないと言われて、十分に検討する時間もないまま、とりあえず遺産分割協議書に署名押印した。長女が相続した土地は、長男が事業をしている工場の底地であり、簡単には処分もできない状況にある。長女は、今になって遺産分割の内容に納得がいかないと主張している。  

 ⇒ 一旦遺産分割協議書に署名押印した以上、後日その内容に納得がいかないとしても、法律的には遺産分割のやり直しはできますが、税法上は新たな資産の譲渡又は贈与となってしまい、新たな税負担が生じてしまいます。この事案では、遺産分割のやり直し以外の方法として、駐車場と工場の敷地との「交換」を検討しましたが、残念ながら両者の価額差額からみて交換の要件を満たしませんでした。最終的には、工場の敷地を長男に譲渡して代金をもらうこととしましたが、長男の事業が余り芳しくないことから、代金は分割払いとなったほか、譲渡の諸経費や長女には譲渡所得税の負担が生じました。たとえ相続税の申告期限間際であっても、遺産分割協議書は納得しない限りは署名押印しないことが大切です。

(事例2-3)相続により共有とした不動産の売却

 被相続人(父)の相続人は、母、長男、二男、長女の4人である。遺産は、自宅、店舗・土地、事務所(区分所有)・土地である(もともと当初の購入時から物件は父、母、長男、二男、長女の共有となっていた。)。遺産分割では、自宅は母が相続し、店舗・土地、事務所(区分所有)・土地は、売却して売却代金は子の3人で分けるということで、子の3人の共有とした。不動産業者から買取業者の紹介もあり、売買金額も決まったが、長女がもっと高く売却できるからと言って、結局、売買契約が流れてしまった。

 ⇒ 遺産分割の方法には、現物分割、換価分割、代償分割、共有分割といった方法がありますが、相続した不動産の売却を予定している場合は、遺産分割の方法を十分に検討する必要があります。一般的には、換価分割とすることが多いようですが、相続登記の名義人を相続人のうちの代表相続人一人とするか、それとも共有名義とするかは悩ましい問題です。今回の事例は、元々相続物件の店舗・土地、事務所(区分所有)・土地については、元々各相続人の共有状態にあったという特殊事情があったため、あえて共有名義としましたが、共有名義とすると、売却先や売却金額の決定に関して共有者全員の同意が必要になることから、売却金額を巡って合意ができないため、売買契約が流れてしまうという問題があります。相続した不動産の売却を予定していても、できるだけ共有名義とすることは避けて、できれば換価分割(代表一人の単独名義)とする遺産分割としたいものです。

(事例2-4)前妻の子と後妻との遺産分割はどうなる?

 被相続人Aの相続人は、前妻との子B、後妻Cの2人であった。被相続人Aは、病気で入院していたため遺言書の作成を考えていたが、作成しないまま死亡した。遺産分割では、前妻の子Bは、当初財産は何も要らないと言っていたが、一夜明けると、前妻の子Bの夫からの助言もあり法定相続分を主張した。相続財産は、後妻が住む自宅と預貯金のみである。

 ⇒ 前妻の子と後妻との間の遺産分割は非常に難しい問題です。なぜならば、法定相続分は、後妻と前妻の子ともに2分の1ずつとなりますが、財産が自宅と預貯金しかない場合、後妻は自宅を取得したいし、老後の資金として預貯金も欲しいでしょうが、他方で、前妻の子はできれば預貯金で取得したいというのが一般的ですので、2人の間で合意することが非常に難しいからです。被相続人が「全財産を後妻に相続させる」旨の遺言書を作成していれば、後妻は前妻の子に対して少なくとも遺留分相当額を支払う必要はありますが、遺言書がない場合に比べて支払う金額は半分(1/4)で済みます。病気で入院していた場合でも、公証人に出張してもらい病院で遺言書を作成することもできます。

(事例2-5)親から子の中の一人に対して長年にわたり毎月の生活費を送金していたケース(特別受益があるとき)

 被相続人Aの相続人は、長男B(派遣社員)、長女C(夫は自営業)、二男D(会社員)の3人である。相続財産としては、預貯金3,000万円と空き家となった自宅(2,100万円)があった。長男は、被相続人の生前に失業していた期間中(約10年間)にわたり被相続人から毎月10万円の生活費の援助を受けていた(合計1,200万円とします。)。長女Cや二男Dは、これは長男Bへの特別受益に該当するとして今回の遺産分割の上で考慮すべきであると主張している。長男Bも、特別受益であることを認めている。

 ⇒ 相続人の中に特別受益者がいる場合は、特別受益を考慮して遺産分割をすることになります。本件では、失業期間中の生活費の送金ですので、相続税法及び贈与税法上は非課税の贈与として相続時には相続財産に加算しなくてもよいかもしれませんが、遺産分割の上では、相続人全員の合意した特別受益額を考慮した上で遺産分割をすることになります。そうしますと、分割対象となる遺産額は、(3,000万円+2,100万円(遺産総額))+1,200万円(特別受益額)=6,300万円となりますので、法定相続分で分けると、最終的な取得する金額は、Bは2,100万円ー1,200万円=900万円、Cは2,100万円、Dは2,100万円となります。今回の事例では、長男が特別受益であることを認めており、かつ、預金通帳の履歴を確認すると毎月10万円の送金事績があったことから、特別受益を考慮して遺産分割を行いました。特別受益は期間の制限がないため、何十年も前の古い話でも主張できますが、通常は特別受益に関する明確な証拠がない限り、なかなか主張が認められることは少ないと思います。

(事例2-6)相続人の中に障害者がいるときの遺産分割

 父が亡くなり、相続人には母、長男(精神障害者1級)、長女の3人が相続人である。長女は、財産は要らないと言っているが、遺産分割はどうすればよいか?

 ⇒ 相続人の中に障害者の方がいるケースは、実際には結構多いようです。事例の場合は、精神障害者1級のため判断能力がないと想定されますので、任意後見人が選任されていない限り、本人に代わって契約などを行う法定後見人を選任した上でその者が代わりに遺産分割協議書に署名押印する必要があります。法定後見人の選任は、家庭裁判所に選任申立てをしますので、数か月間を要しますし、また、遺産分割協議では被後見人の法定相続分を確保する内容の遺産分割協議書でなければ家庭裁判所の許可が下りません。さらに、法定後見人は、一旦選任すると、止めたということはできませんし、被後見人が死亡するまで財産の管理行為を行いますので、専門家に対する報酬をずっと支払う必要がありますし、被後見人の財産は家族であっても自由に使えません。法定後見制度にはこのようなデメリットがありますが、残念ながら、今となってはどうしようもありません(このままでは遺産分割協議ができません。)。

(事例2-7)相続税申告期限まで時間がないことから税理士に言われるまま遺産分割協議書及び相続税申告書に署名押印してしまった

 父が死亡し、相続人は長男と長女の2人であった。主な相続財産としては、自宅の土地建物(長男が同居)、長男が事業用に使用している工場(長男名義)の敷地、隣の駐車場の3筆がある。事業を行っていた長男は、顧問税理士と相談し、長男は自宅土地建物、駐車場を取得し、長女は工場敷地を取得する内容の遺産分割協議書を作成し、この遺産分割協議書の内容に基づいた相続税申告書を作成することとし、税理士は長女に対してこれらの案を申告期限直前になって説明し、長女に対して署名押印を求めてきた。長女は、遺産分割協議書の内容に納得がいかなかったが、兄から後で検討すると言われたので、とりあえず署名押印し、相続税申告書も当初案のまま提出した。後日、長女は長男(兄)に対して、納得がいかないとして不満を述べていたが、長男(兄)は取り合わなかった。今から遺産分割協議書の内容や相続税申告書の内容を訂正・修正することはできますか。

 → よくありがちなことですが、相続人間で遺産分割協議がなかなかまとまらないときに、中心的な主導者から、㋑一旦はこの内容で合意してほしい、後で是正するとか、㋺二次相続では今回の不平等を調整するから、今回の一次相続ではこの内容で署名押印してほしい、と言ったことがあります。しかし、遺産分割協議書に署名押印して合意した以上は、後日その内容を変更することは簡単にはできません。また、仮に遺産分割内容を変更すると、税務署から新たな贈与があったと認定されて課税上の問題が生じることもあります。したがって、申告期限間際に㋑、㋺のような話が合っても、安易に協議書には署名押印しないことが大切です。このようなケースでは、遺産分割書の内容に納得いかないのであれば、遺産分割協議は未了であるとして相続税申告書は未分割であるとして法定相続分で財産を取得したものとして申告をするべきであるといえます。なお、この事例では、後日、長女からは、工場敷地を売却などして手放したいとの要望がありました。税金の問題が生じないようにするために、駐車場と工場敷地を交換契約(固定資産の交換特例に該当すれば、譲渡所得の課税は生じません。)をすることも検討しましたが、残念ながら固定資産の交換特例の要件に該当しないことから、最終的には、長女所有の工場敷地を長男に対して譲渡することとしました(長女には多額の譲渡所得税が発生しました。)。当初の遺産分割協議書の署名押印の段階で、しっかりと希望を述べておくべきこと、納得がいかない内容であれば署名押印をしないで、時間はかかっても協議を続けること(場合によっては家庭裁判所の調停を利用する。)が重要です。

(事例2-8)空き家となった自宅の解体費用の負担を巡って遺産分割協議がまとまらない

 被相続人の財産としては、空き家となった自宅の土地建物、長女の自宅敷地の不動産を所有していた(2つの土地の面積は概ね等しい。)。相続人は、長女と二女の2人である。遺産分割協議では、預金・株式は長女と二女が2分の1ずつ取得し、不動産については、長女が長女の自宅の敷地を取得し、二女が空き家となった自宅の土地建物を取得する(取得後に建物は解体して二女の自宅を建設する予定である。)方向でまとまりかけていたが、二女が建物の解体費用(約400万円)を長女にも半分負担してほしいとの要望があり、この点で遺産分割協議は合意できていなかった。解体費用の負担について、どのように考えたらよいか?

 → 遺産分割協議では、一方が取得する空き家の解体費用の負担を巡ってよく争いとなることが多いようです。これは、最近の人手不足による人件費の高騰により、建物の解体費用がバカにならないくらい高くなったためです。もちろん、相続人間で合意すれば、解体費用を長女と二女の2人で半分ずつ負担することもできますが、遺産分割協議の場では、自宅を取得しない長女が簡単にその負担に応じる意向を示すことは少ないかもしれません。本来は、空き家となった自宅を相続する二女が、自分で建物の解体費用の全額を負担すべきものと考えられますので、長女の言い分にも一理あります。難しい問題ですが、長女と二女の間で解体費用の全額とはいえないまでも、何らかの調整(妥協)が図れれば良いでしょう。家庭裁判所の調停でも、よく問題となりますが、相続人間の合意(譲り合い)ができなければ負担額について合意することはできないのが実情です。

(事例2-9)兄妹が相続人のケースで、妹が居住する自宅を兄が相続する内容の遺産分割協議をしたケース

 被相続人(母)は、自宅に長女と同居していた。相続財産は、少額の預金のほか自宅のみであった。相続人は、長男、長女の2人であった。遺産分割の協議はなかなか合意できていないが、長男(自宅有)は自宅を自分が相続する意向を強かった(多分に長男は自分の子に財産を残したい意向らしい。)。長女の希望は自宅は取得しないことでもよいが、自分が死ぬまで無償で自宅に住んでいたいとのことであった。

 → 長男、長女双方の意向を踏まえると、遺産分割では長男が自宅を取得し、他方で、長女は死ぬまで無償で居住できる権利を確保することができればよいと考えられます。したがって、長男が自宅を相続する内容となる遺産分割協議を作成するほか、長男と長女との間で自宅について死亡するまで無償で居住することを認める「使用貸借契約書」を締結する方法が考えられます。確かに、借地借家法の適用のない使用貸借契約を締結するだけでは、長女が取得する居住する権利は強くないものの、口頭での約束とするよりも、兄弟間での契約書を作成することにより、将来のトラブルを防止することができると考えられます。

3 相続財産の調査・範囲

(事例3-1)相続人が生前に知らなかった預金は名義預金(相続財産)になるか?

 被相続人Aの相続人は、配偶者B、長男C(別居)、二男D(別居)の3人である。相続開始後、自宅内を探したところ、C名義のゆうちょ銀行の通帳及び印鑑、D名義のゆうちょ銀行の通帳及び印鑑が見つかった。C、Dは、これらの預金が存在することを全く知らなかった。また、預金の取引通知は、Aの住所宛に送付されていた。取引内容を確認すると、C、Dが自分のために使用した事績は全くなかった。これらの預金は、名義預金となるのか?

 ⇒ C及びDは、ゆうちょ銀行の通帳・印鑑の存在を全く知らず、自身が所持もしていないこと(=被相続人が支配・管理していたこと)、取引通知の送付先が被相続人のAの住所地宛になっていること、C、Dが預金の入出金の取引をしたことがなく、出金額も自己のために使用したものとは認められないこと、といった事実からすると、これらの預金は被相続人Aの名義預金に該当しますので、相続財産に加算して申告する必要があります。

(事例3-2)配当期待権

 被相続人は、〇年5月1日に死亡した。被相続人は、多数の株式を保有しており、3月末決算法人(6月28日に株主総会を開催予定)の株式に係る未払配当金は、相続財産になるか?

 ⇒ 株式の配当金は、基準日(例えば3月末決算法人では3月31日)現在の株主に対して、配当金を交付することになっており、この配当金は株主総会決議により金額が確定します。このような株式の配当金交付の基準日(3月31日)の翌日から配当金の効力発生の日(6月28日)までの間における配当金を受けることができる権利を「配当期待権」といい、これについても相続財産となります。なお、相続財産として計上すべき金額は、配当金の金額から所得税及び住民税の額(源泉徴収税額)を控除した金額となります。

(事例3-3)生命保険契約に関する権利(解約返戻金相当額という財産的価値)

 父が死亡し、父が保険契約者、被保険者が長男、死亡保険金受取人が父、となっている生命保険契約が見つかった。なお、保険料は一括払いで500万円を父が支払っていた。

 ⇒ この保険は、被保険者(長男)が死亡していないので、保険事故はまだ発生しておりません。ただし、この保険契約を例えば長男に変更した場合には、新保険契約者となる長男は、保険契約を解約することによって解約返戻金(=生命保険契約に係る権利)を取得することができます。したがって、これ(生命保険契約に関する権利)は、本来の相続財産として相続財産に計上する必要があります(本来の相続財産ですので、当然、遺産分割協議の対象にもなります。)。なお、この生命保険契約に関する権利の評価額は、死亡日現在での解約返戻金の金額となります。

(事例3-4)JAの建更(建物更生共済)の取扱い

 相続財産の中にJAの建更(建物更生共済)がありました。これは、相続税申告の対象になるか? また、評価額はいくらで計上すべきか?

 → JAの建更(建物更生共済)は、損害保険部分と積立部分とがあります。この積立部分については、建更を契約解除することによって解約返戻金が発生しますので、この解約返戻金が相続財産(本来の相続財産)となります。したがって、この解約返戻金相当額を相続税申告書に計上する必要があります。また、相続税申告書に計上する場合の評価額は、相続開始時における解約返戻金相当額となります。なお、このJAの建更は、JA共済の契約内容をまとめたJAの共済フォルダーを取得することで判明します。

(事例3-5)小規模企業共済退職金について死亡直前に役員を脱退した場合の課税上の取扱いは?

 被相続人は、法人の役員であり、小規模企業共済の退職金の掛金を払い込んでおり、死亡直前の共済金の金額は1,500万円となっていました。相続人は配偶者、子2人の合計3人です。ただし、被相続人は、相続開始の3日前に役員を退職し、小規模企業共済に対しては退職届(退職日は死亡3日前と記入)をすでに提出していた。現時点では、退職金は支払われていない。被相続人はこの退職金については、相続税法上は、非課税の取扱いとなりますか?また、相続税が課税されるので、所得税は非課税としてよいでしょうか?なお、この退職金については、遺産分割協議の対象となる相続財産になるのでしょうか?

 → 残念ながら、本件では、相続開始の3日前に役員を退職して、小規模企業共済に対して退職届を提出しているので、この退職金は死亡退職金には該当せず、生前退職金となります。したがって、生前退職金(未支給)については、遺産分割の対象となります。また、生前退職金(本体の相続財産)ですので、相続税の課税対象となる相続財産ですので、相続税の申告の対象となる相続財産として計上する必要があります。また、非課税の対象となる死亡退職金には該当しませんので、この生前退職金については相続税法上の非課税の規定の適用はありません。さらに、被相続人が生前に退職金を取得していますので、所得税の退職所得として課税対象になります(所得税と相続税の二重課税とはなりません。)。

(事例3-6)海外の遺族年金は相続税の課税対象となるか?

 被相続人は、若いころに数年間海外(米国)勤務をしていたことから、少ない金額ではあるが米国の年金を毎年受給していた。今回、相続が発生したことにより、この米国の遺族年金を受給することになったが、この米国の遺族年金は相続税の課税対象となるか?

 → 海外の遺族年金は所得税法上は非課税となっていますが、相続税法上は規定がないため課税対象となっています。同じ遺族年金ではありますが、非課税規定のある日本の遺族年金の受給権とは異なり、海外の遺族年金の受給権については税法上非課税となっておりません。納得がいかない方もいるかもしれませんが、現状では法律の規定がない以上仕方がありません。なお、海外の遺族年金の受給権については、相続税の課税の可否を巡って訴訟が継続中ですので、将来的には訴訟で決着(国が敗訴?)がつき、もしかしたら税法が改正がされて非課税となるかもしれません。

4 相続財産の評価

(事例4-1)共有物件の評価

 被相続人は不動産の共有持分を有していた。持分の評価額はどうなるか?

 ⇒ 一般市場取引や競売・公売などにおいては、不動産の共有持分の評価については、全体所有権の評価額×持分割合×持分減価によって評価しています。つまり、共有持分は所有権よりもいろいろな制約があり市場性に劣ることから、持分減価として1割から3割程度を減額するのが一般的です。しかし、相続税の評価では、共有持分であっても、特段の評価減はしませんので、全体所有権の評価額×持分割合により評価額を算出します。

(事例4-2)自宅(空き家)と貸家(現在空き家)の敷地の評価

 空き家となっている自宅と、その隣にある空き家となっている貸家の敷地については、どのように評価すればよいか?

⇒ 自宅敷地も貸家(空き家)敷地も、他人の権利による制約がありませんので、ともに自用地(路線価地域であれば路線価×面積×個別補正率の調整=評価額)として評価します。自宅と貸家が隣接していれば、一体評価することになりますので、場合によっては地積規模の大きな土地の評価減の適用ができます。

(事例4-3)自宅敷地内に畑がある

 自宅敷地内には、一部畑が存在している。登記事項証明書で確認すると、宅地と畑の2筆になっていた。相続税の評価はどうなるか?

 ⇒ まずは「評価の単位」を考えます。畑が敷地内の家庭菜園といえる場合を除いては、基本的には、自宅敷地(地目・宅地)と畑(地目・畑)とが隣接していたとしても、土地の評価は、地目別に評価することになりますので、宅地と畑とは別々に評価することになります。これに対して、自宅敷地内に家庭菜園程度の畑がある場合は、地目の上で「宅地」1筆となっていれば、敷地内にある家庭菜園ということで、敷地全体を宅地として評価します。

(事例4-4)金地金の評価

 相続財産の中に金地金500gが3枚あった。評価額はどうやって算定するのか?

 ⇒ 田中貴金属のホームページで、相続開始日の1g当りの買取価格を確認して、1g当り単価×重量の金額で計上します。

(事例4-5)外貨預金の評価

 相続財産の中にドル建て預金(外貨預金)が存在していた。評価額はどうやって算定するのか?

 ⇒ 取引金融機関のホームページで、外貨の交換為替レートを確認して、対顧客直物電信買相場(TTB)により金額を計算します。

(事例4-6)家財道具一式

 自宅内に家財道具があるが評価はどうすればよいか?

 ⇒ 家財道具一式として、例えば評価額5万円として一括して計上します。なお、電話加入権もこの金額の中に含まれていると考えますので、別に評価額を計上する必要はありません。

5 相続税の申告

(事例5-1)小規模宅地の特例を適用して税額0円となる場合の相続税申告書の提出の要否 

 被相続人の遺産総額は6,000万円で、相続人は3人のため基礎控除は4,800万円であった。小規模宅地の特例を適用して自宅敷地の評価をすると△1,500万円の評価額の減となるので、相続税額は0円となる。この場合でも、相続税の申告書を提出する必要があるか?

 ⇒ 小規模宅地の特例の適用前の課税遺産額が算出されるときは、最終的に小規模宅地の特例を適用して税額が0円となっても、相続税の申告書を提出する必要があります。

(事例5-2)相続時精算課税贈与を加算しても基礎控除以下のときの相続税申告書の提出の要否

 長男は、被相続人から生前に自宅の贈与(評価額は1,500万円、相続時精算課税を適用して贈与税額は0円)を受けていた。被相続人が死亡したが、遺産は預貯金等で2,000万円である。相続人は長男、二男の2人である。相続時精算課税贈与を加算して相続税の計算をすると、遺産総額は3,500万円となり、基礎控除の4,200万円以下である。この場合でも、相続税の申告書の提出は必要か?

 ⇒ 相続時精算課税贈与を遺産総額に加算しても、なお基礎控除額以下である場合は、相続税の申告書を提出する必要はありません。ただし、相続時精算課税贈与で贈与税の納付をしていた場合は、相続税の申告書を提出することにより、贈与税額の還付を受けることができます。

(事例5-3)小規模宅地の特例が適用できる宅地が複数ある場合の選択

 相続財産として、自宅、貸店舗がある。自宅には被相続人の配偶者が居住している。自宅について配偶者が取得すれば特定居住用宅地として特例の適用ができるし、また、賃貸中の貸店舗は長男が相続する予定であるが、長男が取得すれば貸付事業用宅地として特例が適用できる。どちらの土地を選択すればよいか?

 ⇒ 小規模宅地の特例が適用できる宅地が複数存在する場合は、基本的には㎡当りの単価を比較して適用後の評価額の減額の最も大きい宅地を選択することになります。ただし、配偶者には配偶者税額軽減を適用できますので、この規定による減額ができるのにあえて配偶者が取得する宅地について小規模宅地の特例の適用をすることは余りメリットがありません。したがって、このケースでは、一般的には長男が取得する貸店舗について小規模宅地の特例を適用して、配偶者には配偶者税額軽減を適用する方がより節税につながることが多いでしょう。

(事例5-4)相続人が障害者のとき

 被相続人Aの相続人は、配偶者B、長男C(精神障害者2級、会社員)、二男D(会社員)の3人である。相続財産として、自宅のほか、貸店舗の底地を2筆所有しているので、自宅は配偶者Bが取得し、貸店舗の底地2筆は長男C、二男Dがそれぞれ取得することとなった。相続税の計算上、長男Cは障害者控除を適用すると税額が0円となったが、なお控除不足額が残っている。二男Dは、長男を扶養(生活費の送金)をしているわけではない。

 ⇒ 相続税法の障害者控除は、本人に控除額の適用した上でなお控除不足額が残っている場合は、扶養義務者の納付税額から控除することができることになっています。この場合、扶養義務者とは、民法にいう扶養義務者(民法第877条)をいいますので、直系血族、兄弟姉妹、特別の事情があるときの3親等内の親族をさします。しかも、扶養義務者、例えば兄弟姉妹に該当しさえすれば、両者の間で特段の生活費の送金等をしている必要もありません。したがって、障害者の長男の障害者控除不足額を二男の相続税額から控除することができます。

(事例5-5)相続放棄した相続人が死亡生命保険金を受け取った場合の申告

 被相続人Aは、多額の借金があったことから、相続人の妻B、子Cはともに相続放棄をした。被相続人Aは生命保険契約に2口加入しており、死亡保険金の受取人はそれぞれB、Cとなっていた。死亡保険金受取額は、Bが4,000万円、Cが2,000万円であった。

 ⇒ 相続放棄をした相続人が受け取った死亡生命保険金は、「みなし相続財産」として相続税が課税されます。なお、相続放棄した者については、生命保険金の非課税の適用はありません。ただし、相続放棄があった場合であっても、基礎控除額の計算上は相続放棄がなかったものとして相続人のカウントを計算しますので、このケースでの基礎控除額は3,000万円+600万円×2人=4,200万円となります。結局、相続放棄した者が受け取った死亡生命保険金は、全額が課税対象になりますので、6,000万円(課税遺産額)ー4,200万円(基礎控除)=1,800万円が相続税の課税対象になります。したがって、相続税の申告書の提出が必要です。

(事例5-6)互助会の積立てがある場合の葬式費用の控除額

 被相続人は、生前葬儀会社の互助会に加入しており、毎月掛金をかけていた(掛金の合計額は30万円)。葬式費用として100万円かかったが、互助会の掛金を充当したので、実際の支払金額は70万円(100万円ー30万円)であった。相続税申告書上、葬式費用として100万円を差し引くことはできるか?

 → 被相続人が生前に互助会に加入しており、互助会の掛金を支払っていた場合は、相続税申告書上は、㋑互助会掛金積立額の合計30万円は「相続財産」として計上し、㋺「葬儀費用」としては請求金額の100万円を計上することになります。これに対して、被相続人が互助会の掛金を支払っていない場合(互助会の契約者が家族であった場合)には、葬儀費用の請求金額の100万円全額を「葬儀費用」として計上することになります。互助会掛金の積立額は、家族が支払っていたものですから、相続財産として計上する必要はありません。

(事例5-7)被相続人(親)が介護施設に入居した後に親の居住していた自宅に子の家族が入居した場合の小規模宅地等の特例の適用

 被相続人(母親)は、亡夫の遺族厚生年金を受給しており(子からは生活費の送金はなし)、自宅で一人暮らしをしていた。ある日脳梗塞で倒れ、半身不随になったので、マンションに居住していた子(母親とは生計別である)は、家族とともに空き家となった自宅に転居した。その後、母親が死亡した場合に、生計別であった子は、居住用宅地の小規模宅地等の特例の適用を受けることができるか?

 → 母親は、遺族厚生年金の受給を受けており、子からは生活費の送金を受けていないことから、生計別と判断されます。そうすると、このケースでは、母親が介護施設に入所前は、子は母親と生計別であり、相続開始時にも、子は母親と生計別であると認められます。したがって、被相続人と子は、同居の親族ではなく、生計一でもないため、残念ながら小規模宅地等の特例の適用は認められません。子が入居した時期については、住民票の住所移転の日付からも判明しますので、母親が介護施設に入所する前から同居していたとして特例適用をして申告をすることは、税務署調査で否認されますのでやめた方がよいでしょう。ちなみに、母親が介護施設に入所前から子が家族とともに同居をすれば小規模宅地の特例が適用できますが、施設入所前に同居するかどうかは子の家族にとってはなかなか難しい問題です。

(事例5-8)小規模宅地の特例は、配偶者と子のどちらが適用を受けると得か?

 被相続人(父)が死亡し、相続人は母、長男、長女の3人であった。自宅には、父母と長男家族が同居していた。自宅の敷地については、配偶者と長男の2人が小規模宅地の特例の適用が可能であるが、どちらが適用を受けるのが相続税の節税になるか?

 → 相続税法上、配偶者には配偶者税額軽減の規定が適用できますので、結果的に多くのケースで配偶者の税額は0円となります。したがって、配偶者について小規模宅地の特例を適用しても、その効果が減殺されてしまいます。したがって、同居する長男について小規模宅地の特例を適用した方が、全体の相続税額を減らすことができます。

事例5-9)不動産賃貸収入について過去に所得税申告は無申告であったときに貸付事業用の小規模宅地の特例の適用はあるか?

 被相続人(年金生活者)は、不動産賃貸(貸家1棟)を7年前からしているが、過去において賃料収入(賃料は月5万円)について所得税の申告は一切していなかった。今回、相続が発生したので、相続税申告書を作成するに当たり、貸家について小規模宅地の特例の適用が可能であるか?

 → 小規模宅地の特例のうち貸付事業用宅地については、㋑事業的規模でない貸付事業についても適用が可能であること、㋺相続開始前3年以内に新たに貸付事業を開始した宅地については適用できないこと、といった改正が過去において行われています。このケースでは、貸家1棟のみの貸付事業ですが、㋑との関係では規模は問題とならないこと、また、7年前から貸付事業を行っていることから、㋺については事実の証明ができれば、適用する上での問題はありません。問題となるのは、7年前から貸付事業を行っていたことの証明の点でしょう。この点については、賃貸借契約書の写しの提出、過去の所得税の申告書の写しの提出をすることにより、証明することができるものと考えます。仮に、借主との間で賃貸借契約書の作成をしていなければ、口頭で賃貸借契約が有効に成立しているとしても、賃貸開始の年月日を証明することは難しいかもしれません。そこで、申告が可能な過去5年分について所得税の確定申告書(期限後申告書)を提出することにより、不動産所得の存在を証明することになります。これにより過去5年分の所得税の納付が必要になりますが、土地の相続税評価額について減額(貸家建付地としての評価額減(約15%評価減)+小規模宅地の特例適用(200㎡まで△50%評価減))ができますので、今からでも申告する方がメリットが大きいと考えられます。

(事例5-10)父の所有する大きな土地に父母が居住する自宅と長男家族が居住する自宅が2棟建っている場合の小規模宅地の特例の適用

 推定被相続人(父、厚生年金受給者)の所有する大きな土地(1,000㎡)に、父母が居住する自宅と長男家族が居住する自宅の2棟が建っていた。将来父に相続が発生した場合、この土地を長男が相続したときに、長男(父母とは生計を別にしている。)について小規模宅地の特例の適用ができるか?

 → 父の所有する自宅について、同居する妻が相続した場合には、父母の居住する自宅の敷地部分について小規模宅地の特例を適用することはできます。これに対して、父と生計を別にする長男がこの土地を取得(相続)した場合には、生計を別にしている㋑父母の自宅敷地部分についてはもちろんのこと、㋺長男の自宅敷地部分についても、小規模宅地の特例は適用することはできません。つまり、大きな土地のすべてについて、小規模宅地の特例の適用ができませんので、多額の相続税がかかることになります。対応策として考えられることは、父が介護状態になったときに、長男が父母の居住する自宅に同居するといった方法を取れば、父母の居住する自宅敷地部分については、仮に長男が取得したとしても、小規模宅地の特例の適用ができます。ただし、すぐ隣に自分の自宅があるにも関わらずその時点から同居していたことの必要性や証明ができるかどうか、難しい問題があります。

(事例5-11)生前に自宅を相続時精算課税で贈与していた場合に、贈与者について相続が発生した場合の相続税申告

 被相続人(父)は、生前に長男に対して自宅の土地建物を相続時精算課税により贈与していた(贈与税額を納付していた。)。今回、贈与者である父に相続が発生した。相続人は長男と長女の2人であり、相続財産は預金しかなかった。相続時精算課税の贈与を相続財産に加算したとしても基礎控除額以下となる見込みであった。相続税の申告書はどうすればよいか?

 → 相続時精算課税の贈与者について相続が開始した場合、相続時精算課税贈与の評価額は遺産額に加算して相続税の計算をすることになっています。この結果、基礎控除額以下の場合は、相続税の申告書を提出することにより、相続税額の計算上は、相続時精算課税贈与で納付した贈与税額の還付を受けることができます。

(事例5-12)生前贈与(暦年贈与)があった年に贈与者について相続が発生した場合の相続税の申告・贈与税の申告について

 私(長女)は、令和7年9月15日に母から現金300万円の現金贈与を受けました。ところが、母はその後の令和7年10月30日に死亡しました。私が現金贈与を受けた件について、令和7年分の贈与税の申告はどうすればよいでしょうか? また、母の相続税の申告書作成上、暦年贈与でもらった現金300万円はどうすればよいでしょうか? 相続人は、長男と長女の2人で、母の遺産は法定相続分でそれぞれが取得しています。なお、長男は、母から生前贈与は受けていません。

 → 相続で財産を取得した者が、その相続に係る被相続人から相続の開始前7年以内に財産の贈与を受けている場合は、その贈与財産の価額はその者相続税の課税価額に加算されることになっています。したがって、相続開始の年において長女が現金贈与を受けた300万円は、相続税の計算上、長女の取得財産に加算することになります。これは、生前贈与財産を相続税の課税に取り込んで被相続人の財産課税を精算するという目的からです。

 次に、長女が、相続開始の年に受けた現金贈与300万円について贈与税の申告が必要になるかについては、相続税の課税価額に加算されているため、あえて贈与税を課税する必要はないということになっていますので、令和7年分の贈与税の申告は必要ありません(相続税法第21条の2④)。

(事例5-13)相続時精算課税を選択して現金贈与をした年に贈与者が死亡した場合の相続時選択課税選択届出書の提出と贈与税の申告について

 推定被相続人の父(春日井市在住)は、医者から余命3か月の余命宣告を受けていた。推定相続人は、母(春日井市在住)と長男(大阪市西区在住)、長女(東京都在住)の3人である。なお、推定遺産総額は基礎控除額を超えており、相続税の申告書の提出が必要である。父は、令和7年10月に長男に対して現金1,000万円を贈与し、長男は、父からの贈与については相続時精算課税を選択する予定であった。ところが、父は令和7年11月15日に死亡した。長男は、現金1,000万円については相続税の申告書上課税財産に加算するが、相続時精算課税贈与については、相続時精算課税贈与の選択届出書をどこの税務署に提出すればよいか? また、相続時精算課税贈与については、贈与税の申告書は提出する必要があるか?

 → 相続開始年において相続時精算課税を選択し贈与を受けていた場合、長男は、通常であれば受贈者の納税地(住所地)の所轄税務署長である大阪市の西税務署長あてに「相続時精算課税選択届出書」を令和8年3月15日までに提出すべきところ、贈与年中に贈与者が死亡していることから、被相続人の相続税の納税地(被相続人の死亡時の住所地)の所轄税務署長である小牧税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を提出することになります。提出期限は、相続税の申告期限(令和8年9月15日)までであり、相続税の申告書に添付して提出します。これは、相続税と贈与税の一体課税を進める観点から、相続税の申告書の提出先である小牧税務署長に相続時精算課税贈与選択の事実を知らしめるためです。なお、長男は、令和7年中の相続時精算課税贈与について「贈与税の申告書」の提出をする必要はありません(相続税法第28条➃)。

6 相続対策・相続税対策(生前贈与等)

(事例6-1)婿養子と養子縁組したが夫婦関係が破綻

 被相続人は、実子は長女と二女の2人のほか、家業の跡取りとなった長女の夫を養子としていた。相続では、長女の夫が店舗及び敷地を相続し、長女は自宅及び敷地など財産の大半を相続した。二女は現金預金、生命保険金を相続した。数年後、長女と夫の間の夫婦関係がこじれて離婚するかどうかでもめている。

 ⇒ 実子が女性しかいない場合、農業や事業を営んでいたりする家庭では、娘婿となった男性を養子にすることがよくあります。そうすると、相続人の数が養子の分だけ増えて相続税の節税につながります。しかも、相続が発生した際には、婿養子となった子にも財産の一部を相続させることもよくあります。しかし、最近は夫婦関係がこじれて熟年離婚するケースも増えてきており、一旦婿養子に相続させた財産は、離婚しても長女には戻ってきません。婿養子をするかどうか、相続の際に婿養子にも財産を相続させるかどうかは、相続税の節税や家の跡取りの問題も絡み難しい問題ですが、将来の娘の夫婦関係がどうなるかも不明ですので、非常に悩ましい問題です。

(事例6-2)配偶者贈与したが空き家となった自宅の処分

 被相続人(父)は、生前自宅の敷地の持分の一部を配偶者に贈与していた。父生存中(父は介護施設に入所済み)に、母も高齢で脳梗塞を患い介護施設に入所した(認知症にはまだなっていないが疑わしい状況にある。)。自宅は、事実上空き家となっており、ゴミ屋敷化している。長男は、遺産分割で父の財産をすべて相続することしたいと考えている(将来的には、空き家の維持管理が大変なので売却したいとも考えている。)。

 ⇒ 高齢の推定被相続人の男性の方の中には、配偶者の将来の自宅の確保のために、配偶者贈与を相続税対策として利用する方もいるでしょう。しかし、高齢化が進んだ現代社会では、残された配偶者が介護のため介護施設に入所することとなり、自宅が空き家になってしまうこともよくあります。問題は、空き家となった自宅について処分するかどうかとなったときです。配偶者贈与を活用して自宅の一部を生前に贈与した場合にその後夫が死亡したときは、残された配偶者にまだ判断能力があって、しかも空き家となった自宅を売却することに同意してもらえれば売却することに関して問題は生じません。ただし、高齢者はだんだんと認知症が進行することもありますので、判断能力が亡くなる前に売却処分を進めないと、資産凍結にもなってしまいます。一方で、夫の相続で妻が自宅持分の残りを相続すれば、相続税の計算の上では、配偶者税額軽減や小規模宅地等の特例(居住用宅地)の適用ができますので、大幅な相続税の節税につながります。しかし、高齢の配偶者はいつ認知症が悪化するか、脳梗塞等で倒れるかは分かりません。そうなると、空き家となった自宅の処分をすることもできず、やはり資産凍結となってしまいます。今回の事例では、父の相続では、資産凍結のリスクや空き家となった自宅の維持管理を考えて、長男が遺産分割で自宅の一部持分を相続することを希望していましたが、母の持分があるため母が売却に同意しない可能性もあります。また、父が介護施設に入所する時点では、自宅には母が居住しており空き家となっていませんでしたので、長男が自宅を相続しても、空き家譲渡の特例は活用できません。非常に悩ましい問題ですが、相続税の節税や空き家譲渡の特例の適用ばかりではなく、将来の空き家となった自宅の処分等も念頭におくと、生前に配偶者贈与をするかどうかは判断が難しい問題です。

(事例6-3)将来の相続時に小規模宅地の特例を適用できるか?

 推定被相続人Aの所有する土地には、A(元会社員、年金生活者)の自宅と長男B(Aとは生計は別)の自宅が建っている。この場合に、Aに相続があった場合に土地を長男が相続すると、小規模宅地の特例(居住用宅地)の適用はできるか?

 ⇒ 田舎の地主の家ではよくあるケースかと思います。しかしながら、残念ながら、生計が別の長男が、推定被相続人Aの土地を相続した場合には、生計を一にしない長男Bには、Aの自宅敷地部分はもちろんのこと、Bの自宅の敷地部分についても、小規模宅地の特例を適用することはできません。何とか適用できるようにするためには、Bは、Aが生前のうちにAの自宅に同居するか(あるいはBの自宅にAを同居させるか)しか方法がありません。Aは元会社員で年金生活者ですが、老齢厚生年金を受給していますので、十分に自分の生活費を賄うことができています。長男Bが、Aの生活費の援助をしているとして、生計同一であると主張することは難しいです。また、Bが、Aと生計一であることを装うために、住民票のみをA自宅に異動する方法をとることは、仮装隠ぺい行為とみなされてしまいますので、絶対にしてはいけません。特例の適用を受けるために同居するといっても、同居する家族の同意が得られないと思いますので、難しい問題です。

(事例6-4)住宅資金贈与の申告が期限後となった

 親から住宅資金贈与を受けたが、翌年の確定申告の期限までに「贈与税の申告書(住宅資金贈与を受けた場合の非課税)」を提出することを失念し、期限後の申告となってしまった。税務署からは、期限後申告であるので住宅資金贈与の特例は使えないので、贈与税の計算は暦年贈与の計算となることから多額の贈与税とともに無申告加算税、延滞税を納付してもらうことになると言われた。

 ⇒ 残念ですが、住宅資金贈与などの特例は、期限内申告書の提出が要件となっています。したがって、相続時精算課税の選択届出書が事前に提出されていない限り、贈与税の計算は暦年贈与の計算となり、多額の納税が必要になります。昨年内に贈与があった事実がありますので、今から贈与がなかったとすることもできません。

(事例6-5)賃貸していた駐車場について所得税の確定申告をしていない場合の小規模宅地の特例の適用

 被相続人は、8年前から不動産賃貸業として駐車場(アスファルト敷で、5台分、賃料は1台分1か月当り1万円)を所有していた。しかし、賃料収入については、所得税の確定申告をしていなかった。相続税の申告書を作成するに当たって、小規模宅地の特例(貸付事業用宅地)の適用はあるか?

 ⇒ 相続開始前3年以内に新規で貸付事業を開始した場合を除いて、貸付事業用の駐車場については、小規模宅地の特例(貸付事業用宅地)の適用をすることができます。ただし、相続開始前3年以上貸付事業を行っていたことの証明が必要であることから、今から課税権の時効にかかっていない過去5年分の「所得税の確定申告書」及び「収支内訳書」を提出します。相続税の申告書には、過去5年分の所得税の確定申告書及び収支内訳書、賃貸借契約書の写し、賃料の振込事績の分かる預金通帳の写しなどを添付して提出します。

(事例6-6)相続直前の養子縁組について

 父は、多数の不動産を所有する地主であり、病気のため余命1ヵ月と宣告されていた。このまま何も対策しないと相続税が多額となることから、相続税対策として、孫を養子とすることを決定した(実際には、長女が孫の養子縁組を勧めており、父に届出書に署名押印をしてもらい、市役所への届出は長女が代わって行った。)。まもなく父は死亡したため、相続人の長女、二女、長女の子(孫)を含めて遺産分割協議を行い、相続税の申告を行った。なお、遺産分割では、孫は相続財産のうちの不動産1筆(長女の自宅の敷地の土地)を相続した。

 → 推定被相続人が病気で余命宣告を受けた場合に、相続税対策の一つとして、相続開始直前に孫を養子にすることにより、法定相続人の人数を増やすことにより、相続税の基礎控除額を一人分増額させたり、累進税率を緩和することができて、さらに、生命保険等の非課税枠を一人分増やすことができます。結果的に、大幅に相続税額を減らすことができます。注意しないといけないのは、相続税法第63条が、相続直前に孫養子をしたことで「相続税の負担を不当に減少させる結果と認められる場合においては、税務署長は、相続税についての更正又は決定に際し、税務署長の認めるところにより、当該養子の数を当該相続人の数に算入しないで相続税の課税価格及び相続税額を計算することができる。」と規定している点です。したがって、税務署長による孫養子の否認を受けないためには、遺産分割協議に当たっては、養子となった孫にも一定の財産を必ず相続させることが必要ということです。ただ、この事例では、孫はまだ大学生(東京在住)であり、今後、結婚で新しい家族ができて、長女と子の家族との間で断絶が起きたりすると、長女は自宅敷地について将来的にも安定的に確保できるか否か問題が残るかもしれません。孫養子に取得させる財産については、よく考える方がよいでしょう。

(事例6-7)相続税対策として土地の持分について家族に生前贈与をすることは有効か?

 推定被相続人(父)は、先祖代々の土地を多数所有していたが、できれば先祖代々の土地は長男の家系に相続させたいとの意向を有していた。一方で、このまま何ら相続税対策をしなければ、多額の相続税が課税される見込みであった。そこで、所有する土地について、家族である配偶者(妻)、長男、長女、長男の子(孫)の4人に対して、数回にわたり持分を贈与することとした。この結果、推定被相続人の所有する土地の評価額は、大幅に減少することができた。

 → 相続税の節税という観点からみれば、数回に分けて、生前に土地の持分を家族全員に贈与することは有効な方法といえます。ただし、この生前贈与を行った結果、現在の土地の所有関係は、推定被相続人(父)、配偶者(母)、長男、長女、長男の子(孫)の5人の共有となり、推定被相続人(父)の相続発生時には、配偶者(母)、長男、長女との間での遺産分割協議となることから、将来的には共有者間での相続争いとなる可能性も高い(長女の側が、長男の家系と長女との取得する分が平等にならないことに不満を抱く可能性が高いでしょう。)上に、さらに、現時点で共有財産の管理・処分を巡っても共有者間で意見の合意ができずに何もできないといった事態にもなりかねません。相続税の節税という観点だけで、不動産を生前贈与により共有名義とする相続税対策をすることは危険な面もありますので、ご注意ください。

7 遺留分侵害額請求

(事例7-1)「全財産を長男に相続させる」旨の遺言書

 被相続人の相続人は、長男、長女の2人であった。被相続人は、長女とは折り合いが悪かったこともあり、生前「全財産を長男に相続させる」旨の公正証書遺言を作成していた。相続に際して、長女は長男に対して遺留分侵害額請求をしてきた。

 ⇒ 最近の相続では、ネットの情報もあり、ほとんどの相続人が相続に関する知識をある程度持っています。したがって、「全財産を相続させる」旨の遺言書がある場合には、他の相続人は遺留分侵害額請求ができることを当然のように知っています。遺留分は、法律で認められた権利ですので、遺言書があっても全ての財産を相続することはできません。どのみち支払うしかないのであれば、さっさと、遺留分相当額を支払ってしまった方が良いのではないでしょうか。ここで問題となるのは、遺留分額の算定の仕方です。土地の評価額に関しては、固定資産税評価額、相続税評価額、業者の査定価額、不動産鑑定士の評価額などがありますが、どれを基に遺留分額を算定するかについては、相続人間で合意すればよく自由です。ただし、実際の相続の事例では、この評価額が巡って争いとなることも多いようです。支払う側からすれば、安くなるように固定資産税評価額で算定したいところですが、もらう側からすれば、多くなるように時価(業者査定価額、相続税評価額÷0.8など)での算定を主張したいところです。うまく適当な妥協点が見い出せればよいのですが、なかなかむずかしいかもしれません。

(事例7-2)生前に自宅を相続時精算課税贈与していたら

 被相続人の相続人は、長男、長女の2人であった。長女は駆け落ち同然で家を出て行ったため、被相続人は、20年前に同居する長男に対して相続時精算課税により自宅建物及び土地を贈与するとともに、「全財産を長男に相続させる」旨の公正証書遺言を作成していた。後日相続が発生した際、長女は長男に対して遺留分侵害額請求を行ってきた。

 ⇒ 相続人の廃除がされていない限り、被相続人と折り合いが悪かった相続人も、遺言書がない限り、相続人として法定相続分を取得する権利があります。この事例のように「全財産を長男に相続させる」旨の遺言書が存在するであっても、長女は遺留分(1/4)を請求することができます。生前に被相続人が長男に対して相続時精算課税で自宅を贈与していた場合であっても、遺留分の算定上は相続人に対する贈与は相続開始前10年間にした贈与は加算することになっていますので、長男は生前贈与を受けた自宅を別枠でもらうことはできません(遺留分の計算上対象となる生前贈与は、相続時精算課税で非課税であることとは全く関係ありません。)。なお、遺言書に長男に対する生前贈与について持ち戻し免除をする旨を記載しておいても、自宅を別枠として確保することはできません。この事例では、生前贈与は20年前であったため、相続開始前10年間という期間制限を受けませんので、遺留分算定の基礎財産に加算されませんでした。ただし、当事者間で遺留分権者を害することを知ってした贈与は、年数制限はなく、何年前の贈与であっても遡って戻されることに注意してください。

(事例7ー3)「全財産を長男に相続させる」との遺言書があり、長女から長男に対して遺留分侵害額請求がされる見込みである場合の相続税の申告書の作成

 被相続人(父)は、「全財産を長男に相続させる。」旨の公正証書遺言を作成していた。相続人は、長男と長女の2人である。長男は、この公正証書遺言に基づいて、不動産の相続登記、預貯金の解約など相続手続をすべて行った。この遺言の内容に納得しない長女は、長男に対して遺留分侵害額請求をする予定である。相続税の申告期限まで間もない場合、長男は相続税の申告書をどのような内容として作成すればよいか。

 → 相続税の申告期限までに相続人間で遺留分侵害額請求に対する支払金額を合意できる場合には、合意した金額により、長男及び長女がそれぞれ相続税申告書を作成すればよいことになります。取得した財産の価額は、長男は(全財産の価額ー合意した遺留分侵害額の支払金額)を取得したものとして相続税額を計算し、長女は(合意した遺留分侵害額)を取得したものとして相続税額を計算することになります。これに対して、相続税の申告期限までに相続人間で遺留分侵害額請求に対する支払金額を合意できない場合には、長男は一旦全財産を相続したものとして相続税額を計算することになり、後日、遺留分侵害額請求額について合意した段階で当初の相続税の申告内容を是正することになります。申告内容を是正する手続としては、合意した日の翌日から4か月以内に、長男は更正の請求を行い、長女は遺留分侵害額で期限後申告を行うことになります(相続税法第30条、第32条第1項第3号)。

(事例7-4)一次相続で調停審判に移行した家族において、二次相続対策として「長女に全財産を相続させる」旨の遺言書を作成していた

 父は、農家の地主であり、自宅のほか多数の農地(市街化区域内農地と市街化調整区域内農地ともに)を所有していた。相続人は、妻、長女、二女の3人であった。父の一次相続では、長女は次女との間で遺産分割を巡り争いとなり、家庭裁判所の調停・審判まで行った。母の二次相続対策について、長女が弁護士に相談したところ、母は「全財産を長女に相続させる」旨の自筆証書遺言を作成することとなった。今回母の相続では、二女は遺留分侵害額請求の調停を申し立ててきた。相続財産としては、現金預貯金はほとんどなく、不動産を売却して遺留分を支払うしかない。

 → 一次相続で争族争いがあった以上、二次相続でも相続争いとなることは必至でした。「全財産を長女に相続させる。」との遺言書を作成するとしても、長女が遺留分(全体の1/4)を金銭で支払うことは避けれません。農家で相続財産としては土地しかないといった状況ですので、当然遺留分侵害額請求額を支払うには、どれかの土地を売却して支払うしかありありませんし、また、売却しやすい土地となると全体の中でも比較的良好な土地から売却することとなってしまいます。さらに、所得税住民税で儲けの20%が税金として取られてしまいます。私見ですが、相続財産として土地しかないのであれば、遺言書の書き方にもう少し工夫をして、二女にも遺留分相当額に相当する価値のある土地(良好な土地でなくても構いません。)を選んで、「次女に〇〇の土地を相続させる。」とする内容の遺言書とするのが次善の策ではなかったでしょうか。

8 相続財産の処分

(事例8-1)相続した配偶者が居住する自宅の処分

 被相続人Aの相続人は、配偶者(妻)B、長男C、二男Dの3人である。相談者からは、できるだけ相続税の節税をしたいが、母は足腰が悪く一人暮らしであるため、近い将来介護施設に入所する予定である。今回の遺産分割では、最終的には自宅は配偶者Bが相続することとなった。

 ⇒ 相続税法の小規模宅地の特例(居住用宅地)は、配偶者が相続した場合は申告期限まで所有・保有するといった要件はありませんので、母が相続後に直ちに介護施設に入所したとしても、小規模宅地の適用要件は満たすことになります。したがって、相続税の節税を考えるならば、自宅に居住している母が相続することがよいでしょう。さらに、母が将来介護施設に入所した場合には、母の所有し居住していた期間がたとえ短期間であっても、居住用財産の譲渡の3,000万円控除の特例も適用できます。また、一人暮らしであった母が介護施設に入所後に死亡した場合は、空き家譲渡の特例を適用することもできます。

(事例8-2)相続した空き家を譲渡(代償分割)

 被相続人Aの相続人は、長男B(派遣社員)、長女C(夫は自営業)、二男D(会社員)の3人である。相続財産としては、預貯金3,000万円と空き家となった自宅(2,100万円)があった。遺産分割では、預貯金は3等分して、空き家となった自宅は長女と二男が相続することとなった。二女の夫は自営業者であったため、実家の売却で多額の税金の発生や国民健康保険料の保険料がアップすることを心配している。

 ⇒ 空き家となった自宅の売却については、空き家譲渡特例を適用できます。ただし、問題は相続した不動産を売却することを前提とした遺産分割の方法であり、共有分割(長女及び二男名義の共有とした上で売却し、売却代金は持分に応じて分ける。)とするか、換価分割(売却代金から諸費用を控除した残りを2人で分ける。)とするか、代償分割(会社員の二男が実家を相続して長女には代償金を支払う。)とするか、非常に難しい問題でした。最終的には、長女の譲渡所得税や住民税の負担増、夫の扶養から外れたくない、国民健康保険料のアップを防ぎたいとの要望に沿って、代償分割の方法としました。代償分割の方法によると、実家を相続した二男が、不動産譲渡に係る所得税・住民税を負担することになりますが(なお、今回は空き家譲渡の特例を受けることができます。)、二男は会社員ですので健康保険料のアップはありません。長女は、相続で代償金を受け取るだけですので、相続税の負担はありますが、不動産譲渡に係る所得税・住民税の負担や国民健康保険料のアップはありません。不動産譲渡に係る売却代金から諸経費を引いて手残り金額を2等分することになりますが、その際、代償金の金額を決めるに当たって、二男が負担する所得税・住民税の負担を考慮して代償金の金額を決定すれば、2人ともに最終的な手残り金額をほぼ同じにすることができます。なお、国民健康保険料の算定や配偶者控除の対象者の判定では、特別控除適用「前」の合計所得金額を基に算定しますので、空き家譲渡特例「前」の所得金額で判断しますので、長女の要望に沿うためには、代償分割の方法しかなかったということです。

(事例8-3)売却先が決まらないまま建物を取壊し

 推定被相続人は東京に一人暮らしをしていた。財産としては、自宅と賃貸物件(現在は空き家)がある。推定相続人は長女のみであり、長女は近くの介護施設に呼び寄せることにした。将来的には、空き家となった実家(自宅)と空き家の賃貸物件の処分を検討しているが、地元の不動産業者からは建物を取り壊して更地にしないと売却できないと言われ、とりあえず先行して空き家となった賃貸物件を取り壊した。いずれ実家の自宅も取り壊す予定である。なお、不動産業者による売却先は現在も見つかっていない。

 ⇒ 築年数の古い建物が存在するままでは、売却は困難であることは事実です。しかし、売却先が決まっていないのに慌てて不動産業者に言われるままに建物を取り壊してはいけません。建物の取壊しをすると、固定資産税では小規模宅地の特例が適用できず、固定資産税がアップしてしまいます。

 譲渡所得の計算では、建物を取り壊すことが土地譲渡の条件となっている場合には、建物の取壊し費用や建物の除却損を譲渡費用として計上することができますが、先行して建物を取り壊して土地を更地にした状態にした場合には、その後に土地が売却できたとしても、建物の取壊し費用や建物の除却損失は譲渡費用として計上することができません。不動産業者に言われて慌てて建物を取り壊していけません。

 また、空き家譲渡の特例は、売買契約で建物取壊し条件とするケースで適用できますので、売買契約後に建物を取壊しをする必要があります。不要となった実家の建物・土地については、売却先を探して契約金額や建物取壊し費用などの諸費用等が決定した後で、建物の取壊しを実行するべきです。

(事例8-4)相続した金地金の売却

 相続財産の中に金地金500gが3枚あった。相続後に売却したが、所得税(譲渡所得)の計算はどうなるのか?

 ⇒ 金地金の売却については、所得税の計算では総合譲渡所得として計算します(土地などのように分離課税ではありません。)。したがって、他の所得と合算して累進税率での税率(5%~45%)で税金が計算されますので、思いもよぬ高額の税金の負担となることもあります。所得金額の計算は、売却価額ー取得費=所得金額となりますが、購入時期及び購入価額については、被相続人の購入時期及び購入価額を引き継ぎますので、被相続人が購入した際の領収証書を探す必要があります。万一、領収証書が見つからない場合は、概算取得費といって売買価額の5%が取得費とみなされてしまいます。この点、田中貴金属で購入した場合は、HPで購入時の1g当りの価額を探すか、あるいは、個人情報の開示請求をすることにより、購入当時の購入価額が判明します。ちなみに、200g以上の金地金を売却した場合には、田中貴金属から税務署に対して売却者の氏名住所、売却金額などの情報を通知することになっていますので、翌年の所得税の確定申告において「総合譲渡所得」として正しく申告しないと、後々税務署から申告内容のお尋ねが来ますので注意してください。

(事例8-5)認知症対策で信託を利用したケース(委託者死亡のため空き家となった自宅を売却)

 父の認知症対策として二女が父との間で家族信託契約を結んだ。その後認知症になった父が死亡したため、信託契約は終了となり、信託財産の帰属者となった二女は、空き家となった自宅を売却して手残り金額を他の相続人である長女、三女と分けようと考えている。空き家となった自宅を売却したときに、空き家譲渡の特例の3,000万円控除を適用することができるか?

 ⇒ 認知症対策として家族信託を利用する方も中にはいらっしゃいます。信託はできたばかりの制度であり、解釈や取扱いがまだまだ確立していない部分も多いので、後になって問題になってしまうこともあります。このケースも、残念ながら信託終了に伴う残余財産の帰属は、空き家譲渡における「相続又は遺贈による取得」に該当しないので、空き家譲渡の3,000万円控除の特例は適用できないという取扱いになっております(2022年12月20日付国税庁文書回答事例(東京国税局文書回答)参考)。

(事例8-6)バブル期に取得した原野・山林などの別荘地を処分したい

 被相続人はバブル期に取得した原野・山林を所有しているが、維持管理が大変であるし、子らにも管理処分の負担をかけたくないので、値段は気にしないので何とか売却処分ができないか?

 → 今では分からないかもしれませんが、昔はバブル期において将来値上がりが見込まれるとして原野・山林が高い価額で取引がされていました。相続税の申告の相談事例の中には、この時期に高額(500万円など)で取得した原野・山林を保有している方も見えますが、現在ではほとんど価値がありません(1万円でも売却ができません。)。不要な田舎の不動産を買い取りますといった不動産業者の新聞広告もありますが、信頼できる業者かどうかは分かりませんが、実際にはこのような買取業者に当たるしか方法がないかもしれません。ただし、相続した不動産を複数処分することを検討している方は、うまく同一年中に原野・山林(1万円ー500万円=△499万円)と他の不動産(+1,000万円の売却益)を併せて売却できれば、不動産譲渡所得内で損益通算できますので(△499万円+1,000万円=+501万円に対して譲渡所得税が課税)、所得税の大きな節税となります。バブル期に取得した原野・山林は、維持管理の手間や負担を考えれば、売却する値段を気にすることなく処分することが大切でしょう。

(事例8-7)亡父名義の実家について遺産分割が未了である場合、実家を売却する上で誰が相続すると譲渡所得が節税になるか?

 父、母、長女(結婚して自宅を所有している)の家族において、父が2年前に死亡した。父の財産は、自宅の土地・建物(平成2年建築)と預金2,000万円のみであり、相続税の基礎控除額以下であり相続税の申告義務はなかった。亡父の遺産分割は行っておらず、自宅の名義は亡父のままであった。この度、母が認知症で施設に入所したため、空き家となった実家の相続をして、近いうちに売却することを検討している。実家の中を探したが、土地の売買契約書や建物請負契約書は見つかっていない。この場合、亡父の遺産分割については、母か長女のうちどちらがが相続することが、実家を売却した場合の譲渡所得税の計算上節税になりますか?

 → 実家の売却をすると、当然譲渡所得税がかかります。ただし、譲渡所得を0円にできる特例が2つあります。一つは、居住用財産譲渡の特例であり、もう一つは空き家譲渡の特例です。どちらも適用要件がありますので、該当しないと特例の適用はありませんので、その点も含めて亡父の遺産分割協議を行う必要があります。

 母が相続すれば、居住用財産譲渡の特例が適用できますが、ただし、母は現在介護施設に入所していることから、住まなくなった日から3年後の12月31日までに譲渡しないと特例の適用は受けられません。また、母は母認知症とのことですので、将来的に認知症が悪化して判断能力がないと判断されると、母名義となった実家を売却することもできません。それでは、母が実家を相続したとして、その後の母死亡時に空き家となった実家について空き家譲渡の特例を適用できるかについて考えますと、建物の建築年月日が平成2年であることから(昭和56年5月31日以前に建築されたものであることの要件を満たしません。)、このケースでは空き家譲渡の特例は適用できません。

 一方、長女が実家を相続すると、長女は自宅を所有しており、実家に同居していませんので、長女が売却した際には居住用財産譲渡の特例は適用できません。また、長女が相続すると、父死亡時には母が実家に同居していましたので、空き家譲渡の特例も当然適用できません。

 譲渡所得税の節税のことだけを考えれば、母が実家を相続して早期に売却することが最も良いのでしょうが、母が実家の売却に関して同意・納得するとも思われません。仮に、長女が相続するとなると、譲渡所得の計算上、取得費の計算に関して、概算取得費の5%によらないように、当時の売買契約書や建物請負契約書を探すことにより税金は少なくなりますので、当時の契約書をぜひとも探す努力をしてみるよりほかはありません。

(事例8-8)空き家譲渡特例で譲渡所得税が0円と思っていたが、市役所の「確認書」を取得していなかった

 空き家となっていた実家を相続から2年後に2,000万円で売却したが、空き家譲渡特例の適用により税金(所得税)は0円になるものと思って所得税の確定申告書の作成を税理士に依頼したところ、市役所で譲渡前に「被相続人居住用家屋確認書」を取得していないと適用できないのではないかと言われた。不動産業者からも特にアドバイスもなかったので戸惑っている。

 → 空き家譲渡特例は、手続要件として、市役所で確認を受けた「被相続人居住用家屋確認書」を提出する必要があります。この確認書をもらうためには、市役所に対して、①被相続人の除票住民票の写し、②申請被相続人居住用家屋の相続人の住民票の写し、③申請被相続人居住用家屋の取壊し後の敷地の売買契約書、④家屋取壊し後の閉鎖登記事項証明書の写し、⑤電気、水道、ガスの使用中止日(閉栓日、契約廃止日)が確認できる書類、⑥市町村長が被相続人居住用家屋が相続の時から取壊しの時まで事業の用、貸付の用又は居住の用に供されていたことがないことを認めることができる書類、⑦申請被相続人居住用家屋の取壊し後の敷地の譲渡の時まで新s寧被相続人居住用家屋の使用状況が分かる写真、などを提出することになっています。したがって、基本的には、売買契約を締結した段階から市役所の窓口で相談しながら必要書類を確認して揃えて行く必要があります。建物取壊し後に敷地を譲渡した後になって、市役所で確認書の申請をしても果たして確認書を交付してもらえるかどうかは分かりません。不動産業者も空き家譲渡特例に関して余り詳しくない方もいますし、そこまでアドバイスをしたり、手続代行をしていただけるかどうかは業者により異なります。仮に適用が受けれないとなると、何百万円、何千万円の税金がかかってしまいます。後になって、不動産業者や市役所に文句を言ってもどうしようもありません。そうすると、空き家の譲渡が決まった段階で、自分で市役所に確認するか、税理士に事前に相談するしかありません。

(事例8-9)財産の中に負動産(山林や原野)があるので、子孫に維持管理の負担をかけたくない

 負動産(原野商法で取得した山林や原野)は要らないし、子や孫にも維持管理の負担をかけたくないので、それ以外の不動産については生前贈与してもらい、相続が開始したときには、相続放棄をすることで負動産を相続しない方法を考えたがどうでしょうか? ちなみに法務局に相続土地国庫帰属法について相談をしたが、別荘が建っている、境界が明らかでないといった理由から、承認されないと言われている。

 → 被相続人がバブル期に取得した山林・原野を所有しているケースは案外と多いようです。しかも、当時の取得価額は数百万円もしたのに、現時点では全く売却できないといったことが多いようです。このような負動産を相続の機会に何とか処分したいというご相談も多いのですが、残念ながら、不動産業者にとっては、全く買主が見込めない物件を取り扱うことはありませんし、仮に取り扱うとしても仲介手数料がほとんどもらえないので、まず積極的には扱ってくれません。したがって、ご自身で、雑誌に広告を掲載をしている業者やインターネットを通じて根気よく買受人を見つけるしかありません。私が国税局で差押不動産の公売を担当していたときには、原野商法の山林・原野でもまれに売却できたりしました(山林マニアとか)。もちろん売却価額は大した金額ではありません。できれば他の良好な不動産とセットで売却(同一年中に売却)できると、そちらの不動産の売却益から山林の売却損を損益通算できるので、利益を圧縮することもできます。値段は、1円とか0円とかでもよいから何とか処分したいものです。なお、相談者のような考え方は、ある有名な税理士法人の出している書籍でも記述がありますが、生前贈与での移転コスト(登録免許税、不動産取得税、司法書士手数料など)もバカにならないですし、ご相談者が相続放棄をしても、相続人不存在であれば相続財産清算人を選任する必要があり、売却が難しい負動産のためにわざわざそのような手続を取ることは国家の費用の無駄遣いではないでしょうか。