親が死亡した場合には、「遺言書」や「財産一覧表」に具体的な相続財産が記載されている場合を除いては、まずは相続財産を調べることから始まります。
その上で、相続財産についての「財産一覧表」を作成して、そこにそれぞれの財産の評価額を記載することになります。
この作業が終わらないと、以後の「遺産分割協議書」の作成や「相続税の申告書」の作成もできません。
最近は、高齢化社会、核家族化で、高齢者は一人暮らしであったり、子らは親とは(何十年も)別居しているケースが多いので、親がどのような財産を保有していたのかは、別居する子らには分からないケースも多いようです。また、高齢の世代では、夫婦であっても、夫が全ての財産を管理している家庭もあり、妻ですらどのような財産を保有しているかよく知らないといったケースも多いようです。
まずは、以下の事項を参考に、自分でできる範囲で探してみましょう。
税務署の相続税調査では、相続人に対して、被相続人の住所の変遷、生い立ち、学歴、職歴、趣味、性格、投資を聴取していますので、これらの事項を基に財産を探すヒントを探してみるのも手かと思います。私の事務所でも、相続財産の端緒の手がかりのために、これらの事項の聴取りから始めます。
また、被相続人の過去の「所得税の確定申告書」、「青色申告決算書(収支内訳書)」や、被相続人が相続人となっていた被相続人の親の相続時の「相続税申告書」も、保有資産を探すヒントになります。
1 相続財産の調べ方
(1)預貯金
➀自宅内の金庫や重要書類の保管場所などにある、「預金通帳」、「キャッシュカード」を探します。金融機関からの「取引通知書」などの郵便物も取引先金融機関・支店名を把握するヒントになります。
➁分からない場合は、手あたり次第となりますが、近隣の金融機関に対して残高照会をしてみる方法もあります。田舎では、ゆうちょ銀行や農協は大半の方利用している可能性がありますので、必ず残高照会をした方がよいでしょう。
③マイナンバーカードと預金口座を紐付けいている方については、「預貯金口座管理制度」を活用することにより、相続人が取引のある一つの金融機関に照会すると、紐づけしている被相続人の口座情報が一括して通知される制度が始まっています。利用はまだまだあまり進んでいないようですが、口座との紐づけが定着すれば、今後は有効な手段となると見込まれます。
④過去の預金通帳の取引履歴を念入りに確認すると、大きな資産の取得や株取引などが把握することができることもあります。
(2)株式・投資信託
➀証券会社から郵送される「取引通知書」、「特定口座県間取引報告書」、「配当金支払通知書」などの郵便物を探します。これを基に、証券会社に対して「残高証明書」の発行請求をします。
銀行の預金通帳への配当金の入金事績から、株式を保有している事実を把握することもあります。また、所得税の確定申告書から、株式取引の有無や配当金などが分かることもあります(あくまでも株取引を申告していればです。)。
➁日相続人から株式を保有しているとは聞いていたが、どこの証券会社で取引をしていたか不明の場合は、証券保管振替機構に対して「登録済加入者情報」の開示請求(手数料は1件6,500円)をしますと、取引をしていた証券会社や信託銀行が分かります。
(3)不動産
➀自宅内の金庫(銀行の貸金庫)、重要書類の保管場所にある、「固定資産税の納税通知書」、「権利書(登記識別情報)」などの書類を探します。
➁最寄りの市町村で不動産について、「名寄帳」、「固定資産税評価証明書」を取得します。その後に、近くの法務局で「登記事項証明書」を取得して所有名義人を確認します。
③亡くなった親が生前に話していた「○○市に不動産を所有している」といった情報があれば、該当する市町村の資産税課(固定資産税課)で「名寄帳」を収集して確認します。
案外と見落としがちになるのが、本籍地などに被相続人の親名義(祖父母名義)の不動産が相続手続がされずにそのまま残っているケースがあることです(これらも被相続人の相続財産となります。ただし、先代の相続手続が終わっていなければ、非常に面倒な手続になります。)。
また、バブル期において、原野商法の被害に遭ってそのままとなっている北海道や飛騨地方や東濃地方などの山林、原野を保有していることもあります。固定資産税が非課税であることも多く、納税通知書が送付されていないことあって、気がつかないことも多いようです。生前に親から〇〇に山林を持っていると聞いていたり、登記済み証でも発見しなければ、見つからないかもしれません。
④令和8年2月2日にスタートする、全国の所有不動産を一括して名寄せして照会できる「所有不動産記録証明制度」を利用することにより、所有する全不動産を把握することができるようになります。
(4)生命保険契約
➀自宅内の金庫や重要書類の保管場所にある、「保険証書」を探します。生命保険会社から郵送される「保険契約内容の確認通知書」、年末調整で使う「生命保険料控除証明書」などの郵便物も調べる手掛かりになります。
➁過去に提出した「所得税の確定申告書」の生命保険料控除の内容を確認します。
③預金通帳から口座振替されている保険料の支払先の生命保険会社を確認します。
④最後の手段として、一般社団法人生命保険協会に対して「生命保険契約照会制度」を利用して照会をしてみる方法があります(利用料は3,000円)。この照会では、被相続人が保険契約者又は被保険者となっている保険契約を名寄せ(生命保険会社全42社を対象に照会可能)した上で一括して回答してくれます。
(5)金地金・その他
➀金地金については、自宅内の金庫、金融機関の貸金庫の中を探して調べます。
➁農協の建物更生共済(満期金のある積み立てタイプ)、信用金庫や農協の出資持分も相続財産になります。
③ゴルフが趣味だった方はゴルフ会員権を持っているかもしれません。また、過去に投資をしていた方は、リゾート会員権を持っていることもあります。自宅内の金庫や貸金庫の中に「会員証書」などを保管していないか探してみます。
④被相続人が自営業者だった場合は、小規模企業共済(自営業者の退職金制度)に加入している可能性もあります。「共済契約証書」や「所得税確定申告書」から加入の事実は分かります。
(6)デジタル資産(ネット銀行、ネット証券、電子マネー、ポイント)
➀まずはデジタル資産について、どのようなものをどこに持っていたかといった情報が分からないとお手上げ状態です。
亡くなった親が話していたことを思い出して探すヒントにしましょう。
➁パソコンやスマホで管理している場合には、パソコンやスマホを開くパスワードが分からないと、正直言って探すことは難しいでしょう。
次に、パソコンやスマホを開くことができた場合には、パソコンやスマホの履歴やお気に入り確認しましょう。ただし、ログインするとしても、IDやログインパスワードが分からないと情報を入手することは困難ですので注意してください。
相続人が困らないようにするためには、生前に親にデジタル資産の一覧表やIDやパスワードをメモしておいてもらうことが必要です。
③ネット銀行やネット証券については、まずはホームページで問合先を確認した上で、必要書類を揃えた上で取引内容を確認しましょう。
その他のデジタル資産についても、保有していることが分かれば、まずはホームページの問合先を確認した上で、そもそも相続できるのかどうか、相続できるとした場合の名義変更手続の必要書類は何かを確認しましょう。
